暴落から1日で急反発、そしてASMLの強気決算 — 「AI投資は減速か加速か」の答え合わせが始まった

導入: 1週間で往復したジェットコースター
7月14日、韓国株式市場は歴史的な暴落に見舞われました。KOSPIは-8.95%、AIメモリーの主役SKハイニックスは-15.4%と上場来最大の下げ。「業績は最高なのに株価が暴落する」という現象に、AI投資ブームの終わりを連想した人も多かったはずです。
ところが翌15日、同じ市場は+6.24%の急騰で「買いサイドカー」(急騰時のプログラム売買停止措置)が発動されるという、正反対の記録を作りました。そしてその日の午後、オランダの半導体装置最大手ASMLが、この混乱に対するひとつの「答え」と読める決算を発表しています。
この記事では、この1週間の乱高下が何だったのか、ASML決算の中身、そして本日7月16日15時(日本時間)に控えるTSMC決算の見どころを整理します。
何が起きたか: 事実の整理
急反発の連鎖(7月14日〜15日)
きっかけは米国市場でした。7月14日(米国時間)、英バークレイズがSKハイニックスの米国上場株(ADR)について、目標株価330ドルで「オーバーウェイト」の投資判断を開始。ADRは+27.29%と急騰しました(Seoul Economic Daily)。
これを受けた15日のソウル市場ではSKハイニックス+8.83%、サムスン電子+6.27%、KOSPIは+6.24%の7,284.41で引け、前日の暴落をほぼ埋めました(Korea Times)。東京市場も日経平均が+1,008円(+1.49%)の68,751円と大幅続伸。半導体検査装置のレーザーテックは午前に一時10%を超える上昇となりました(株探)。
ASML決算のポイント(7月15日発表、公式リリースより)
- 4-6月期売上は93億ユーロ(約1.7兆円、1ユーロ185円換算)で市場予想を上回り、純利益は29億ユーロ
- 7-9月期の売上ガイダンスは110〜120億ユーロ。今の四半期から2割以上の増収を見込む異例の段差
- 2026年通期見通しを430〜450億ユーロへ今年2回目の上方修正
- EUV露光装置の生産能力を2027年に30%増強、2028年にさらに30%の追加増強を検討
- フーケCEO「AI関連投資が先端チップの需要を牽引している。顧客は能力拡張計画を加速している」
ASMLは半導体を作るための装置を供給する、サプライチェーンの最上流にいる会社です。その会社が「2年連続で能力3割増」を打ち出すのは、顧客(TSMC、サムスン、SKハイニックスなど)から複数年単位の発注コミットが見えていなければ起こらない行動です。
影響の整理: 日本株にとって何を意味するか
日経平均の上昇を牽引してきたのはAI・半導体関連です。ASMLの決算は、この物語の土台を装置最上流から補強しました。
興味深いのは、有価証券報告書ベースの実数字で見ると、日本の装置大手には「出遅れ」の側面があることです。東京エレクトロンの2026年3月期は売上成長+0.5%とほぼ横ばいで、営業利益は前期比マイナスでした(EDINET、有報期末株価ベースでPBR 8.28倍・PER 29.7倍)。ASMLの能力増強が実際の発注につながるなら、日本装置勢の成長率は来期に再加速する構図が見えてきます。
一方、EUVマスク検査をほぼ独占するレーザーテックは2025年6月期にROE 46.9%・営業利益率48.8%という突出した収益性で、PERは期末ベース20.7倍(EDINET)。期待が最も先行しているテスタのアドバンテスト(期末ベースPBR 18.5倍)と比べると、セクター内でもバリュエーションの温度差はかなり大きい状態です。
※上記のPBR・PERは有価証券報告書の期末株価ベースであり、現在の株価水準とは乖離があります。
見通し: 今日のTSMCと「良い決算でも売られる」リスク
本日16日15時(日本時間)、TSMCが4-6月期の決算会見を開きます。月次売上の集計で、四半期売上約396億ドル(約6.4兆円、162円換算)・前年比+36%の過去最高はすでに確定しており(Reuters算出)、焦点は(1)通期ガイダンスの引き上げ幅、(2)AIチップ向け先端パッケージング(CoWoS)の増強ペース、(3)設備投資計画です。
ただし、注意点が2つあります。
第一に、7月14日の暴落が教えたのは「業績最高×株価急落」が実際に起こるということです。期待値が十分に高い状態では、良い数字でも「材料出尽くし」で売られることがあります。SKハイニックスADRのソウル原株に対する約50%のプレミアムも、過熱の名残と読めます。
第二に、今週の株高には「米インフレ指標の下振れによる利上げ観測後退」というマクロの追い風が重なっています。半導体固有の強さと金利の安心感を混同すると、原油高などでインフレ懸念が戻った局面で読み違えます。
売り・買い両方向でサーキットブレーカー級の変動が1週間に収まったという事実は、この相場のボラティリティの水準自体が切り上がったことを意味します。方向は強気材料が優勢でも、値動きの荒さは前提にすべき局面です。
まとめ
- 7/14の韓国発の暴落は、1営業日でほぼ往復。ファンダメンタルズの転換ではなくポジション清算の色彩が濃い
- ASMLは通期を年2回目の上方修正、EUV能力を2027年+30%へ。装置最上流は「AI投資は加速」と答えた
- 本日15時のTSMC決算で、ファウンドリ側の答えが出る。数字が良くても「出尽くし」の反応はあり得る
- 日本の装置株には出遅れ→追いつきの余地がある一方、セクター内のバリュエーション格差は大きい
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本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。数字の出所: ASML公式プレスリリース、Korea Times、Seoul Economic Daily、株探、Reuters、EDINET(edinet-insight、有報期末株価ベース)。