マーケット深掘りノート

7月24日、トランプ関税の「つなぎ」が切れる — ほぼ報道されていない米関税リセットの崖

7月24日、トランプ関税の「つなぎ」が切れる — ほぼ報道されていない米関税リセットの崖の図解ポスター

はじめに — 静かに近づいている期限

日経平均が6万8000円台、S&P500が史上最高値圏という穏やかな相場の裏で、米国の関税制度全体が7月下旬に「乗り換え」の期限を迎えることは、日本ではほとんど報道されていません。

期限は2つあります。7月20日がUSTR(米通商代表部)の301条調査の完了期限、7月24日が現在の関税の土台である「122条関税」の自動失効日です。この4日間で、米国の関税は法的な土台ごと入れ替わる可能性があります。

何が起きてきたか — 最高裁判決から150日

話は今年2月に遡ります。2月20日、米連邦最高裁はLearning Resources対トランプ事件で、6対3の判決を下しました。トランプ政権が相互関税やフェンタニル関税の根拠にしてきたIEEPA(国際緊急経済権限法)は、大統領に関税を課す権限を与えていない——つまり、2025年以来の「トランプ関税」の本体は、始まりから無効だったという判断です(WilmerHale、2026年2月20日)。徴収済み関税の還付は推定1,750億ドル(約28.2兆円、1ドル161円換算)に上るとされます。

政権は同じ日に対抗手段を打ちました。1974年通商法の122条という条文を使い、全世界一律10%の課徴金を即座に発動したのです(JETRO、2026年2月)。ただしこの122条には法律上の縛りがあります。税率は最大15%、期間は最長150日。この150日が尽きるのが、7月24日です。

政権の次の一手 — 「上限なし」の301条

政権が期限切れを座して待っているわけではありません。3月11日、USTRは301条に基づく調査を2本立ち上げました。ひとつは日本・中国・EU・韓国・台湾など16カ国・地域の「過剰生産能力」を対象とし、電子機器・半導体・自動車部品・電池・機械・金属をセクター指定したもの。もうひとつは60カ国・地域の「強制労働への執行」を問うものです(JETRO、2026年3月)。

6月に出た強制労働調査の提案内容は、日本にとって見過ごせないものでした。カナダ・EU・メキシコ・台湾など14〜15カ国・地域は10%、日本を含む46カ国は12.5%という二段構えの案です(JETRO、2026年6月)。昨年夏の日米合意で「相互関税15%」を勝ち取ったはずの日本は、最高裁判決でその合意の法的土台ごと消滅し、現在は一律10%を課される一方、次の体系では「優遇組」に入れていません。

そして301条には、122条のような税率上限も期限もありません。提案されている12.5%は天井ではなく、床です。

日本への影響 — 変わるものと変わらないもの

整理すると、日本の対米輸出のうち自動車と鉄鋼は232条という別の法律に基づく関税(自動車15%・鉄鋼50%)で、これは最高裁判決の影響を受けず、今回のクリフでも変わりません。変わり得るのは、それ以外の一般品目——機械、電子部品、化学などです。

開示データで関連企業の現在地を確認しておくと(出所: EDINET、edinet-insight。株価指標は有報期末ベース)、自動車部品のデンソーはPBR0.95倍・PER12.0倍と控えめな評価で営業利益率7.3%。機械のコマツはEPSが前期比-12.6%と踊り場に入っており、関税コストの再燃は減益局面での追い打ちになります。電子部品の村田製作所はPBR2.28倍・営業利益率15.4%と高収益ですが、「電子機器・半導体」というセクター指定の直撃コースにいます。

日本政府も動いています。赤澤経済再生相は7月3日と5日、立て続けにラトニック商務長官と電話協議を行いました(内閣官房)。「昨年の合意より不利にならないようにする」が日本側の一貫した方針です。7月20日までにこの巻き返しが実るかどうかが、最初の分水嶺になります。

見通し — 3つのシナリオ

円滑な乗り換えなら、日本が10%組か適用除外を確保し、市場への影響は限定的です。強硬な乗り換えなら、日本は12.5%のまま、しかも上限のない301条の下で再エスカレーションの交渉カードに晒されます。2025年4月の関税ショックの記憶が蘇る展開です。そして空白——調査完了(7/20)から失効(7/24)までわずか4日しかなく、手続きが間に合わなければ一時的に追加関税が消える混乱もあり得ます。

株式市場はこのイベントをほぼ織り込んでいません。S&P500は最高値まで0.45%の位置にあり(Seeking Alpha、7月11日)、「最高裁が関税を止めてくれた」という整理のままです。7月20日の週は、輸出株を中心にヘッドラインへの感応度が一段上がる週になると見ています。

まとめ

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本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません。