マーケット深掘りノート

業績は過去最高なのに株価は史上最大の下げ — 韓国半導体クラッシュが日本株に問うこと

業績は過去最高なのに株価は史上最大の下げ — 韓国半導体クラッシュが日本株に問うことの図解ポスター

導入: サーキットブレーカーが発動した日

7月13日、韓国の株式市場が「ブラックマンデー」級の一日を迎えました。総合株価指数KOSPIは-8.95%の6,806.93で取引を終え、午前にはサイドカー(プログラム売買の一時停止)、午後にはサーキットブレーカー(全取引の20分停止)が発動しました(Korea JoongAng Daily)。

主役はメモリー半導体大手のSK Hynixです。株価は-15.37%と史上最大の下げを記録し、サムスン電子も-10.70%。売りはその日のうちに東京(日経平均-1,315円)、そして米国(Micron -6.4%)へと連鎖しました。

奇妙なのは、この急落が業績のピークで起きたことです。

何が起きたか: 「過去最高」の直後の暴落

サムスン電子は7月7日に4-6月期の暫定決算を発表したばかりでした。営業利益は89.4兆ウォン(約9兆円)と前年同期比19.1倍、3四半期連続の過去最高です(共同通信)。AI向けメモリーの価格高騰が利益を押し上げました。

SK Hynixも、7月10日に米ナスダックへのADR(米国預託証券)上場を果たし、初日+13%と華々しいデビューを飾ったところでした。調達額265億ドルは外国企業として史上最大です。

急落の引き金とされたのは、韓国系証券会社のレポートです。SK Hynixの4-6月期営業利益を市場コンセンサス(65兆ウォン)より約8%低い60.4兆ウォンと予想したもので、理由は「HBM(AI向け高帯域メモリー)は長期契約で価格が固定されており、足元のDRAMスポット価格+30%、NANDスポット+50%という値上がりを取り込めない」というものでした(BigGo報道ベース)。

注目すべきは、このレポート自体は投資判断を強気に据え置き、営業利益率は過去最高の74.6%になると予想していたことです。「予想より少し低いかもしれない」という程度の材料で、株価は15%下げた。これが今回の急落の本質を物語っています。

影響整理: 「織り込みの飽和」と日本株の同じ構造

今回の下げは、需要が消えたわけでも、価格が下がり始めたわけでもありません。「業績がどれだけ良くても、それはもう株価に入っている」という状態が、ADR上場イベントの通過と小さな下方材料をきっかけに一気に可視化された——そう整理するのが自然です。

見逃せないのは市場構造の問題です。KOSPIのサーキットブレーカー発動は今年7回目で、開設以来13回のうち過半が2026年に集中しています(Korea JoongAng Daily)。半導体2銘柄が指数を牽引してきた市場は、下げるときも同じ2銘柄が増幅装置になります。

そしてこの構造は東京も同じです。7月13日の日経平均の下げ1,315円のうち、アドバンテストとキオクシアの2銘柄だけで約476円を占めました(財経新聞)。

有価証券報告書ベースのデータ(EDINET、株価指標は期末株価ベース)で日本の関連銘柄を見ると、温度差が分かります。

つまり、期待が大きく張り出した銘柄(キオクシア・アドバンテスト)と、鈍化が既に数字に出ている銘柄(東京エレクトロン)では、調整の性質が異なります。前者はセンチメントの問題、後者はファンダメンタルズの問題です。

見通し: 7月16日のTSMC決算が分水嶺

この調整が「メモリー株の混雑解消」で終わるのか、「AI相場全体のピークアウト」に広がるのかを分けるのは、7月16日のTSMC決算です。

7月下旬にはSK Hynixとサムスンの確報決算(HBM価格・設備投資計画の言及)、8月には市場調査会社によるメモリー価格の確報データも控えます。「スポット価格の伸びがいつ止まるか」が、サイクルの現在地を測る次の物差しになります。

なお、同じ7月13日には米国のイラン封鎖再導入で原油が+9.6%と急騰しており(別記事参照)、金利上昇を通じてハイテク株の逆風が重なる複合局面です。

まとめ

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本記事は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

主な出所: Korea JoongAng Daily、CNBC、Bloomberg、共同通信、日本経済新聞、財経新聞、EDINET(edinet-insight、株価指標は有報期末ベース)(2026年7月13日時点)