売上25%増なのに株価は下落? AMAT決算が映す「期待値の壁」

売上高は前年同期比25%増。1株利益は41%増。それでも株価は決算後に下がりました。
数字だけを見れば、かなり強い決算です。米半導体製造装置大手Applied Materials(AMAT)が2026年8月13日に発表したFY2026 Q3の売上高は91.15億ドル、非GAAP希薄化後EPSは3.50ドルでした。ところが、通常取引を534.54ドルで終えた後、時間外取引では511.87ドル前後まで約4%下落しました。
「業績が良いのに、なぜ売られるのでしょうか」。今回の決算は、AI相場を見るうえで大切な変化を映しています。
何がそんなに良かったのか
まず事実を整理します。
AMATのQ3売上高91.15億ドルは前年同期比25%増、非GAAP EPS3.50ドルは同41%増でした。主力の半導体システム売上高は約70.4億ドル、装置の保守・サービスを担うApplied Global Services(AGS)は約18億ドルで、いずれも過去最高とされています。
次の四半期についても、会社は売上高97.5億~107.5億ドル、非GAAP EPS3.82~4.22ドルを見込んでいます。売上高レンジの中央値は102.5億ドルです。今回の売上高は、5月時点の会社見通し中央値89.5億ドルを1.65億ドル上回りました。
ここまでは「AI向けの設備投資が続いている」という、素直に強い内容です。先端ロジック、DRAM、HBM、先端パッケージでは、より細かな加工、成膜、検査が必要になります。計算需要が増えるほど、チップを作るための装置にも投資が必要になる構図です。
良い決算でも下がる理由
ここからは見立てです。
株価が反応するのは、業績の絶対水準だけではありません。「市場がどこまで期待していたか」との差で動きます。テストで90点を取っても、周囲が満点を期待していれば失望されるようなものです。
AMATは売上高も利益も伸ばし、次の四半期にも増収を見込んでいます。それでも下落したのは、投資家が単なる好業績ではなく、さらに大きな上振れや中期成長率の明確な引き上げまで織り込んでいた可能性があります。
これは「AI向け需要が終わった」という意味ではありません。むしろ需要が強いことは今回の数字で確認できます。ただし、相場の評価基準が「需要はあるか」から「高い期待を毎回超えられるか」へ移った、と考えるほうが自然です。
なお、時間外取引は通常取引より参加者が少なく、値動きが大きくなりやすい市場です。約4%安だけで装置業界全体の需要悪化と決めつけるのは早計です。翌日以降の通常取引で反応が変わる可能性もあります。
日本の装置株にはどうつながる?
日本株では、東京エレクトロン(8035)、SCREENホールディングス(7735)、KOKUSAI ELECTRIC(6525)、アドバンテスト(6857)、レーザーテック(6920)、ディスコ(6146)などが同じ設備投資サイクルの影響を受けます。ただし、全社が同じ工程、同じ顧客構成ではありません。
東京エレクトロンの有価証券報告書を見ると、FY2026の売上高は2兆4,435億3,300万円、営業利益は6,249億3,600万円、研究開発費は2,778億6,600万円、ROEは29.6%でした。研究開発費はFY2025の2,500億1,700万円から約11.1%増えています(EDINET〈edinet-insight〉)。
この数字で注目したいのは、売上高だけではありません。半導体装置は技術競争が激しく、次世代工程への研究開発を止めにくい産業です。需要が増えても、研究開発費や供給能力の増強費用が先に膨らめば、利益の伸びは売上高ほど大きくならない場合があります。
一方、東京エレクトロンが7月30日に示したFY2027上期予想は、売上高1兆6,200億円、営業利益4,580億円です。FY2026上期実績の売上高1兆1,796億6,800万円、営業利益3,031億5,300万円を大きく上回ります。装置需要の強さを確認する材料ですが、今後はこの計画を達成できるか、利益率を維持できるかが焦点になります。
投資家として次に見るもの
第一に、AMATが次の四半期に売上高97.5億~107.5億ドルという会社レンジを達成できるかです。主力装置だけでなく、継続収入に近いサービス部門AGSの伸びも確認したいところです。
第二に、装置メーカーの粗利率と研究開発費です。「受注が増えた」というニュースだけでなく、その成長を利益に変えられているかを見ます。
第三に、顧客側の設備投資です。TSMCやMicronなどが先端ロジック、DRAM、HBMへの投資を維持すれば強気シナリオが続きます。反対に、投資時期の先送りや特定工程への偏りが出れば、装置各社の成長率には差が生まれます。
AMATの次回FY2026 Q4決算説明会は、会社カレンダー上では2026年11月12日の予定です。ここで今回の高い売上水準が一時的なものか、持続的なものかが、よりはっきりします。
まとめ
今回のポイントは、AMATの業績が悪かったことではありません。売上高25%増、非GAAP EPS41%増という強さでも、高まった期待を十分に超えたと受け止められなければ株価が下がることです。
AI設備投資の物語は続いています。ただ、相場は「AI関連なら一律に評価する」段階から、売上成長、利益率、研究開発負担、顧客投資の持続性を細かく比べる段階へ進みつつあります。好決算後の値動きは、その選別が始まったサインとして見る価値があります。
本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません。