営業利益6.22億円はどこへ消える? GameWithの黒字転換を分解する
GameWithは2026年5月期に営業黒字へ戻りました。しかし、全社の営業利益1.01億円に対し、メディア事業だけなら6.22億円を稼いでいます。差は5.21億円です。
黒字転換だけを見ると、事業再建は終わったように見えます。セグメントを開くと、むしろ本番はこれからです。
今回の問いは一つです。GameWithは、高採算の攻略メディアで他事業を支える会社から、複数の事業が自力で稼ぐ会社へ転換できるのでしょうか。
私のエッジ仮説は、全社利益だけでは会社の実力が見えにくい、というものです。市場はメディアの稼ぐ力を過小評価しているかもしれません。一方で、新事業の売上成長を競争力と取り違えている可能性もあります。そこで、今年の有報で書き換わった方針と、事業別の採算を突き合わせます。
目次
この会社は何をしている会社か
GameWithは、ゲーム攻略・紹介サイト「GameWith」を運営し、広告枠やゲーム会社向けのタイアップ記事を販売する会社です。ほかに、eスポーツチーム、ゲーマー向け光回線、NFTゲームを手掛けます。2026年5月期の売上高は40.47億円、東証スタンダード上場。有報データで確認できる前期末の連結従業員は177人です。EDINETでは情報・通信業に分類され、比較可能な2025年5月期の営業利益率は同業中央値8.2%に対して▲5.7%、603社中542位でした。その後の2026年5月期は2.5%へ戻りましたが、全社ではなお中央値を下回ります。
有報の主語が「黒字化」から「広告依存脱却」へ変わった
前年と今年の有報テキストを比較しました。前年は「メディア事業の再成長」と「会社全体の黒字転換」が中心で、攻略サイトの本数増加や英語圏展開を掲げていました。今年は、攻略プラットフォームとクリエイターメディアを立ち上げ、「従来の広告収益依存からの脱却」を目指すと書きました。全社AI活用による業務効率化とコスト圧縮も新たに前面へ出ています。
これは言葉だけの変化ではありません。黒字化という短期課題を通過し、検索流入と広告単価に頼る収益構造そのものへ手を入れる段階に移った、と読めます。
競争力はある。ただし、ほぼメディアに集中している
2026年5月期の有報から売上高と営業損益を取り、利益率を営業損益÷売上高で計算しました。端数のため、セグメント売上の合計と連結売上は一致しません。
| 2026年5月期 | 売上高 | 営業損益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|
| メディア | 23.12億円 | 6.22億円 | 26.9% |
| eスポーツ・エンタメ | 11.62億円 | ▲0.16億円 | ▲1.4% |
| ISP | 4.31億円 | ▲0.12億円 | ▲2.8% |
| その他 | 1.40億円 | ▲0.96億円 | ▲68.6% |
| 連結 | 40.47億円 | 1.01億円 | 2.5% |
この表から言えるのは、売上の多角化と利益の多角化が別物だということです。メディア以外の3事業は売上の約42%まで育ちましたが、合計ではまだ営業赤字です。さらに本社費用などの調整があり、メディア利益の約84%が連結段階までに消えます。
メディアの強みは、記事を置くだけではありません。有報によれば、リモートの「ゲームプレイワーカー」を使って攻略情報を速く作り、ヒット作の検索流入を集め、複数広告主の入札で広告枠を売ります。同じ利用者接点を、ゲーム会社への有料攻略サイトやタイアップ販売にも使えます。大量の記事、検索順位、利用者、広告主とゲーム会社の接点が重なるため、後発が一つの機能だけをまねても同じ採算にはなりにくい構造です。
数字にも残っています。メディア売上は8.9%増えました。PV数はやや減ったのに、PV単価が過去最高水準となり、増収を確保しています。数量減を単価と直接販売で補った形です。ただし、営業利益は2.3%減り、利益率は前年の30.0%から26.9%へ低下しました。価格決定力はありますが、無制限ではありません。
会社自身も、攻略メディアは参入障壁が高くなく、検索エンジンの仕様変更やゲーム会社の発売延期でPVが減る可能性をリスクに挙げています。競争力は「検索に強い」ことだけではなく、検索の外でも利用者と広告主をつなげられるかで決まります。だから今年、「広告依存脱却」が主語になりました。
構造的な行方――需要、コスト、資本配分
需要面で最も再現性がありそうなのはISPです。売上は22.4%増え、営業損失は1.07億円から0.12億円へ縮みました。アルテリア・ネットワークスの回線品質とGameWithのゲーマー接点を組み合わせ、契約者が積み上がるストック型です。メディアの集客力を別商品へ移せるかを測る、分かりやすい実験でもあります。
対照的に、eスポーツは売上が53.0%増えたものの、高額な大会賞金が複数発生したことが寄与しました。チームの強さはブランドですが、賞金は毎年同じようには積み上がりません。スポンサー、イベント、配信、グッズの収益が賞金なしでも固定費を賄えるかが、本当の競争力です。
コスト面では、AIは記事制作や社内業務を軽くする一方、他社も使える道具です。制作費が下がるだけでは堀になりません。浮いた人員と費用を、タイアップ営業や攻略プラットフォームの利用者獲得へ移し、メディア利益率を守れるかが重要です。
資本配分では、当期の設備投資1.16億円のうち1.08億円が「その他」のソフトウェア関連でした。新作NFTゲーム「EGGRYPTO X」は、前年有報では2026年5月期中の公開予定でしたが、現在は2026年秋予定(会社発表、2026年5月15日)です。開発投資の回収は後ろへずれました。会社は2026年7月15日の通期決算で、賞金や新作の時期など未確定要素が多いとして2027年5月期予想を非開示としました。投資先を増やす力は確認できましたが、回収の再現性はまだ確認できません。
私は、GameWithの競争力は「ゲーム市場の成長」ではなく、高採算メディアの利用者接点をISPや直接広告へ横展開できる点にあると読みました。eスポーツとNFTは、現時点ではその証明よりも、資本配分の検証対象です。
株価への含意――1.15倍のPBRは転換を半分だけ見ている
2026年8月25日終値は178円、時価総額は32.66億円、実績PBRは1.15倍でした。2026年5月期EPS1.43円に対する実績PERは約124.5倍、売上高に対する時価総額は約0.81倍です。現値と最新開示値からの機械的な試算で、会社予想が非開示のため予想PERは計算できません。
高い実績PERは成長期待だけでなく、利益の分母が1.01億円と小さいためです。一方、PBR1.15倍は純資産を大きく上回る評価でもありません。現在の株価は、黒字は続くが高収益化は未確認、という状態を映しているように見えます。
見立てとのズレが生まれる条件は明確です。前提は、メディア利益率が25%前後を保ち、ISPが黒字化し、eスポーツとその他の赤字が賞金に頼らず縮むことです。この場合、売上を大きく増やさなくても、メディアから消えている5.21億円の一部が連結利益に残ります。反証条件は、メディア利益率が20%を割る、PV単価の改善でも減収を補えなくなる、ISPの赤字が再拡大する、または新作公開後もその他事業の赤字が縮まらない場合です。そうなれば、PBRが1倍を上回る前提である事業転換の価値は数字に表れません。
限界と、次に見るポイント
業界比較は情報・通信業全体で、ゲーム攻略メディアだけの比較ではありません。比較可能な業界順位は2025年5月期、セグメント分析は2026年5月期で時点が異なります。PVの実数、タイアップ比率、ISP契約数、eスポーツの賞金以外の売上は未確認です。株価指標は8月25日終値ベースで、その後の変動を反映しません。
次は2027年5月期第1四半期決算を見ます。8月26日時点で発表日は未公表です。会社IRとEDINETの「経営成績」で、メディア売上と利益率、ISP営業損益、eスポーツの賞金以外の収益、EGGRYPTO Xの公開時期を確認します。見るべきは黒字か赤字かだけではありません。6.22億円の稼ぐ力が、連結利益へどれだけ残るようになったかです。
本記事は公開データに基づく機械的な試算であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。