ジョイフル本田は日用品の安売り店? 売上の56.6%を占める「住まい」の稼ぐ力
「ホームセンターは日用品を安く売るだけで、価格競争から抜け出せない」と思われがちです。ところがジョイフル本田の2026年6月期は、売上の56.6%が資材、園芸、リフォームなどの「住まい」分野でした。9月15日提出の有報の販売実績から計算した割合です。
私は、日用品の値段だけで比べると、この会社を選ぶ顧客の理由を見落とすと考えました。確かめたいのは、専門性を広げることが、価格競争に耐えて稼ぎ続ける力になっているかです。売る商品が違うだけでは、利益が続く証明にはなりません。
ジョイフル本田は、関東を中心に工具・建築資材・園芸用品・日用品などを一般消費者や職人へ販売し、住宅リフォームも手掛ける会社です。東証プライムの小売業で、2026年6月期の連結売上高は1,328.17億円、従業員は1,973人。比較できる2025年度の単体営業利益率8.33%は、EDINET DBの小売業中央値3.39%を上回ります。ただし食品店や衣料店も含む比較で、ホームセンター内の順位ではありません。
専門商材と立地に、稼ぐ理由があります
新有報は、工具や部材の品揃えだけでなく、商品知識を教える講習や専門技術の継承を説明しています。職人が用途に合う商品をそろえ、使い方を相談できれば、別々の店を回る手間を減らせます。こうした利便性が、同じ店を使う理由になると読みます。
商品ごとの採算にも違いがあります。決算説明資料では、2026年6月期の単体売上総利益率は「住まい」34.5%、「生活」27.7%です。仕入原価を引いた段階では、住まい関連の方が利益を残しています。ただし専門人材や店舗の費用を引く前の数字です。単一セグメントのため、分野別の営業利益は分かりません。
もう一つは立地です。有報の連結損益計算書には、商品売上とは別に不動産賃貸収入65.57億円があります。店舗を自社の商品販売だけでなく、テナントから収入を得る場所にもしています。この収入にも施設の維持費などがかかるので、全額を利益とは扱いません。
日用品の薄利販売だけ、という通説は当てはまりません。一方、価格競争から抜け出せない、という部分は否定できませんでした。会社は集客につながる商品の価格競争力を維持したことを、粗利率低下の一因に挙げています。相談相手として選ばれても、価格を無視してもらえるわけではないのです。
新しく始めたのは専門店化ではなく、その実行の拡大です
前年の有報にも、基幹店の周りに専門店を配置する方針と、物流センターで検品・品出しを効率化する取り組みがありました。「今年から専門店へ転換した」という見立てなら外れです。
今年の変化は実行範囲です。新有報には、資材やペットの専門店の相次ぐ出店に加え、株式会社本田の買収が載りました。同社の法人顧客と配達機能を、ジョイフル本田の品揃え・調達力と組み合わせる方針です。来店を待つだけでなく、仕事場へ商品を届ける接点を持てます。
ただし、接点は利益そのものではありません。買収で連結範囲が変わった影響を避け、有報の単体損益計算書で同じ会社を比べました。利益率は営業利益÷売上高です。
| 単体の実績 | 2025年6月期 | 2026年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,289.80億円 | 1,301.46億円 |
| 営業利益 | 107.48億円 | 88.80億円 |
| 営業利益率 | 8.33% | 6.82% |
売上が増えても、営業利益は減りました。専門店を増やせば採算もすぐ改善する、という期待は外れました。会社は人件費と新規出店費用の増加を説明しています。相談できる人と近くの店舗を増やすには、先に費用がかかります。その負担を追加の販売で吸収する段階には、まだ届いていません。
有報の経営分析が示す連結純利益90.02億円には、買収時に計上した負ののれん発生益19.40億円も含まれます。これは買収価格と取得した純資産の評価に由来する会計上の利益で、毎年の商品販売で繰り返す利益ではありません。純利益だけで専門店化の成果を測ると、実力を見誤ります。
需要は増やせても、回収の確認はこれからです
需要面では、専門店と配送によって既存の商圏を深く使う余地があります。ただし有報は、期末にかけて品薄や値上げへの懸念に伴う購買も発生したと説明しています。供給できたことは強みでも、その需要が毎年続くとは限りません。
直近の8月月次も、既存店売上は4.4%増ですが、客数は3.7%減、客単価は8.4%増です。買収した本田は既存店に含まれません。増収を、来店する顧客の広がりと同じ意味にはできません。
コスト面では、品揃えと相談対応の維持に在庫と人材が必要です。会社が有報で挙げるのは、仕入価格変動、他業態との競争、出店投資の回収に時間がかかるリスクです。私が追加で確かめたいのは、新専門店の売上が近隣の基幹店から移っただけではないか、という点です。商圏全体の追加利益は開示されていません。
資本配分も回収を待つ姿です。有報のCF分析では、営業キャッシュフロー72.83億円に対し、有形・無形固定資産の取得支出は53.27億円。差し引き19.56億円です。取得支出には店舗用地や設備更新、システム構築が含まれ、全部が新店投資ではありません。
私は、専門性を届ける範囲は広がる一方、数年後の稼ぐ力が強まるかは投資回収次第、と読みました。必要なのは店舗数の増加だけでなく、増えた人件費と店舗費用を吸収する利益です。
予想PER20.7倍は、強みの見落としを示しているか
9月15日終値は2,268円でした。会社予想の翌期EPS109.50円で割ると、予想PERは約20.7倍です。有報期末株価ではなく直近終値で再計算しています。会社の営業利益予想は86億円、前期比1.5%減で、すぐに採算が回復する計画ではありません。
この倍率から、市場が専門性を無視しているとは読めませんでした。現在の利益に加え、将来の回復や還元をどう評価するかが問題です。市場参加者の期待を倍率だけで一意に逆算することもできません。
さらに、アークランズとの経営統合協議があります。新有報は共同調達や物流の相互利用を掲げていますが、7月3日の変更開示で最終契約や持株会社設立の日程は未定になりました。会社予想は現在の組織が前提です。株価には統合への期待や条件変更も影響し得るため、単独企業のPERだけで評価を完結できません。
株価を支える前提は、専門店と法人向け供給が追加の粗利益を生み、増えた固定費を吸収することです。統合による調達改善が実現すれば上積みの余地はありますが、未実現の効果は現在の利益に足しません。売上だけ増えて採算が戻らなければ、将来利益への期待が下がる方向に働きます。
反証条件は、2027年6月期を通じても既存店客数が前年割れし、翌期にも単体営業利益率が2026年の6.82%を上回れないことです。その場合、専門性の拡大が利益回復につながるという読みを見直します。これは私の観察基準で、会社目標や売買基準ではありません。
限界は、専門店ごとの営業利益、法人配送の採算、商圏単位の投資回収率が分からないことです。粗利率の差だけで、専門店の方が最終的にも高収益だとは断定できません。
次は10月上旬に9月月次を、10月末に第1四半期資料の掲載を確認します。これは私の確認時期で、具体的な発表日はIRカレンダーで今後確認します。見るのは既存店客数と単体採算です。半期報告書では在庫と設備取得後の現金、随時の統合開示では日程・条件・効果額を追います。専門性を広げた先で、株主に残る利益が増えるかを確かめます。
本記事は公開データに基づく機械的な試算であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。