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技術で強いレーザーテックは、なぜ14.3%減益なのか

・ 約6分で読めます ・ 文責: けいすけ@有報全部読む

技術で優位に立つ半導体装置メーカーは、利益も安定して伸びると思われがちです。ところがレーザーテックの2026年6月期の営業利益は、前期比14.3%減でした。会社の業績報告にある数字です。

高い利益率を出す会社が減益になると、技術の優位まで弱まったように見えます。私は、そこを分けて確かめたいと思いました。問いは、装置の販売が減る年にも、将来の稼ぐ力は積み上がっているのかです。

レーザーテックは、半導体の回路を転写する原版「マスク」などの欠陥を調べる装置を、世界の半導体メーカーへ販売する会社です。設計・開発に加え、納入後のサービスも担います。東証プライム上場で、2025年6月期の連結売上高は2,514.77億円、従業員は1,163人。有報の会社概要とEDINET DBの比較では、営業利益率48.85%は電気機器226社中2位です。

今回は有報の5年財務と事業・リスクの記述を読み、最新の会社開示で変化を確認しました。単一セグメントのため、装置とサービスの利益率は未開示です。品目別売上と全社採算を分けて使います。

目次
  1. 強さは、顧客が次に困ることを先に知る関係にあります
  2. 装置の谷をサービスが埋め始めています
  3. 利益を次の技術へ回すには、現金になるまで待つ力も要ります
  4. 予想PER36.2倍には、既に回復への期待があります
  5. 次の有報では、サービスの中身が変わったかを見ます

強さは、顧客が次に困ることを先に知る関係にあります

同社の2025年の利益率は、業種中央値7.05%、上位四分位10.69%を上回ります。直接競合だけの比較ではありませんが、2021〜2025年も全社利益率は毎年35%超でした。単年度の好況だけで生まれた採算ではありません。

有報の経営方針・リスク欄は、顧客から技術ロードマップを共有してもらい、エンジニアが関係を築くと説明しています。製造の多くを協力会社へ委託し、自社の資源を研究開発へ集中する方針です。

顧客が次の製造工程で必要とする検査を早く知れば、量産に間に合うよう開発できます。納入後の支援から次の課題を得られれば、開発の出発点でも優位を保てます。光学技術だけでなく、この往復が参入を難しくしていると私は読みました。値上げ幅は未確認ですが、高採算と顧客関係はその読みを支えます。

ただし、顧客との近さには別の面があります。有報の主要顧客欄では、Intel、TSMC、Samsung向け売上の合計が全社の約79.4%です。少数の先端企業に深く入り込むことで稼ぐ一方、その企業の設備投資時期に売上が左右されます。

顧客に選ばれることと、毎年同じ量を注文されることは別です。

装置の谷をサービスが埋め始めています

2025年有報の品目別売上を、2026年の業績報告と並べました。利益率は営業利益を売上高で割った計算値です。

6月期半導体関連装置の売上サービス売上全社営業利益率
2025年2,029.65億円429.59億円48.8%
2026年1,680.90億円586.46億円45.7%

装置の販売が落ちても、サービスは伸びています。全社売上に占めるサービスの割合は、計算すると17.1%から25.4%へ上がりました。納入した装置から、その後も収入を得る部分が大きくなっています。ただし、利益別の開示がないため、サービスが営業利益をいくら下支えしたかは分かりません。

会社は減収について、前期の受注低迷が影響したと説明しています。有報でも、装置が高額なため、少数の納入・検収時期の変動で年度業績が動くと記しています。技術で優位なら利益も安定する、という通説は成立しませんでした。

ここで、サービスが増えれば安定収益へ転換した、と結論づけるのも早いです。有報の収益認識注記では、2025年のサービス売上429.59億円のうち、一定期間にわたって認識した収入は218.80億円。残りは一時点で計上しています。

期間にわたる収入はサービス全体の約半分です。「サービス全額を期間契約の収入として読める」という想定は外れました。一時点の売上にも繰り返す仕事はあり得ます。会計上の計上時期だけでは、契約の更新率や収入の安定性まで決められません。

利益を次の技術へ回すには、現金になるまで待つ力も要ります

有報の財務データでは、営業活動によるキャッシュフローは2024年の333.17億円から2025年の778.74億円へ増えています。ただし、同年の純利益846.52億円には届きません。有報のCF分析は、法人税の支払い290.13億円、棚卸資産の増加による支出96.79億円などを挙げています。

これは高採算を否定する数字ではありません。開発し、部材をそろえ、装置を完成させて顧客に受け入れられるまで、資金が先に必要になる構造です。前受金もあるため、利益と入金は同時に動きません。工場を多く持たない経営でも、運転資金まで不要にはなりません。

資本配分で注目するのは、そこを支えながら開発を続けられるかです。2025年の研究開発費は116.77億円でした。有報の研究開発欄には、マスクの検査感度を上げる装置や、異物の付着場所を判別する装置の開発が載っています。研究開発費は営業費用に含まれ、それを負担した後にも高い利益率が残っています。

需要面では、回路が細かく複雑になるほど、従来は見つけられなかった欠陥を捉える必要が生じます。会社のEUV説明にある、微細化と検査性能の関係です。半導体の生産数量が増える効果に加え、製造方法が変わること自体が開発機会になります。

一方、コスト面で会社が挙げるのは、技術人材の確保と、代替しにくい光源・光学部品の調達です。製造委託で生産量を調整できても、次の技術や供給網への支出は続ける必要があります。

私が追加して見る論点は、サービスの増加がこの先行費用をどれだけ支えられるかです。数年後の稼ぐ力は、装置の納入先が増え、そこでの支援が次の開発と収入につながれば強まります。その循環は見えますが、費用を賄う安定性まで証明できたわけではありません。

予想PER36.2倍には、既に回復への期待があります

9月10日の終値は36,320円でした。EDINET DBが集計した8月6日決算短信の翌期予想EPS1,004.12円で割ると、予想PERは約36.2倍です。有報期末株価ではなく、直近終値で再計算しました。

会社の翌期計画は売上高2,900億円、営業利益1,250億円です。増収増益ですが、計算した利益率は43.1%。増益と利益率の回復を同じものとして計画しているわけではありません。

私は、この倍率では技術の強さと利益回復に既に評価が付いていると読みます。市場の期待を倍率から一意には逆算できませんが、「強いのに評価されていない」とする仮説は支持できません。減益を抜けるだけで、株価の評価がさらに上がるとは限りません。

評価の上積みにつながる前提は、装置受注が回復した後も続き、納入済み装置からのサービス収入が増え、開発費を払いながら利益を伸ばせることです。利益の持続期間が想定より長くなるなら、将来利益への評価を支え得ます。

反証条件は、半期単位で半導体関連装置の受注とサービス売上がともに前年割れし、次の半期にも回復しないことです。単発の検収ずれだけでは説明しにくくなり、成長の循環という読みを見直します。会社計画の利益率43.1%を通期で下回った場合も、開発への先行支出なのか、製品構成や採算の変化なのかを確認します。成長への期待が下がれば、増益していても評価倍率が縮む可能性があります。

次の有報では、サービスの中身が変わったかを見ます

限界は、製品別利益率、検査装置ごとの最新シェア、サービス契約の更新率が未確認なことです。技術の優位と全社採算は確認できても、個別製品の価格決定力までは測れていません。有報の詳細分析は2025年6月期、最新業績は2026年6月期で、時点も分けています。

まず9月下旬に有報掲載ページを確認し、2026年6月期有報が出たら「収益認識関係」の期間収入、主要顧客の構成、CFの在庫・前受金を照合します。具体的な提出日は未確認で、これは私の確認時期です。次の7〜9月期決算では品目別受注とサービス売上を見ます。発表日は会社のIRカレンダーで確認します。技術が強いかに加え、その技術から稼ぐ機会が増え続けているかを追います。

本記事は公開データに基づく機械的な試算であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。