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クミアイ化学の利益下方修正は、在庫評価損が終われば回復するのでしょうか

・ 約4分で読めます ・ 文責: けいすけ@有報全部読む

クミアイ化学の利益下方修正は、在庫評価損が終われば回復するのでしょうかの図解ポスター

「在庫評価損は一時的なので、翌期の利益は元に戻る」と思われがちです。ところがクミアイ化学は、売上予想を引き上げる一方で、営業利益予想を72億円から27億円へ減額しました。9月11日の開示を読むと、私は「評価損が消えること」と「利益を稼ぐ力が戻ること」を分けて考えたいと思いました。

クミアイ化学工業(4996)は、農業で使う除草剤や殺菌剤などを開発・製造し、国内外の販売先へ供給する会社です。化成品も手掛け、2025年10月期の連結売上は1,704.62億円でした。主力の畑作用除草剤がアクシーブです。年次売上はEDINET(edinet-insight)で取得し、有価証券報告書と照合しています。

目次
  1. 売上を増やす予想なのに、なぜ利益を減らしたのか
  2. 在庫の損失と、次に作る商品の利益は別です
  3. 独自製品の強さから、価格と原価の競争へ
  4. 経常増益より、農薬事業の利益を見たい
  5. 次は12月、価格と原価が近づいたかを確認します

売上を増やす予想なのに、なぜ利益を減らしたのか

今回の2026年10月期予想では、売上は1,620億円から1,750億円へ上方修正しました。一方、営業利益の減額率は62.5%です。会社が挙げた主因は、アクシーブへのジェネリック品参入による市場価格の低下と、それに伴う棚卸資産評価損です。決算補足資料では、米国向け出荷が販売促進支援の強化で増えたことも説明しています。

ここには、数量を確保するための価格対応が、利幅を圧迫する関係があります。売上の回復だけでは、採算まで戻ったかは分かりません。

また、減額した45億円は「旧予想と新予想の差」です。確認した資料では、評価損だけの金額を特定できませんでした。45億円を丸ごと足し戻して、72億円を翌期の正常利益とする計算には根拠がありません。

在庫の損失と、次に作る商品の利益は別です

在庫評価損とは、保有している商品の回収見込額が下がったことを、帳簿に反映する処理です。棚卸資産の会計基準は、通常の販売目的の在庫について、売却で回収できる正味の金額が帳簿価額を下回る場合に評価を切り下げる考え方を示しています。

その仕訳をした瞬間に、同額の現金が出ていくわけではありません。評価損が翌期に繰り返されなければ、前年比で利益が増えることもあり得ます。

ただ、安い競合品が市場に残るなら、これから製造する商品の売価も影響を受けます。新しく作る商品の原価が十分下がらなければ、利幅は以前の水準へ戻りません。さらに、評価を切り下げた在庫を売るときは帳簿上の原価が低くなるため、その販売で出る利益を、新規製造分の採算改善と同一視することもできません。

評価損がなくなるかに加えて、その後の販売価格で利益が残るかを見る必要があります。 これは同社の製造分が赤字だという断定ではなく、回復を確認するための条件です。

独自製品の強さから、価格と原価の競争へ

会社はアクシーブの製品説明で、物質特許の満了後、成熟期へ移行しつつあるとしています。すべての特許が失効したという意味ではなく、製法などの権利による保護は残っています。

ここで変わるのは、利益を守る方法です。効く製品を供給できれば数量と利益が伸びた段階から、競合価格でも選ばれ、かつ原価を回収できるかが問われる段階へ移っていると読めます。

回復の道筋もあります。会社の方針は、生産数量の拡大による原価低減、製造方法の改善、混合剤の開発による付加価値化です。値下げで使いやすくなれば市場そのものが広がる可能性もあります。価格低下を数量と効率で補えるなら、利益回復は十分に検証対象になります。

逆に、出荷が増えても追加の価格対応が続き、農薬事業の利益率が下がるなら、この回復シナリオは弱まります。

経常増益より、農薬事業の利益を見たい

今回の第3四半期累計は営業減益なのに経常増益でした。決算短信では、為替差損から差益への転換や、持分法による投資利益の増加が確認できます。

これらも会社の利益ですが、アクシーブの売価と製造原価の差が改善した証拠ではありません。国内農薬や化成品が連結利益を支える場合も、海外主力品の回復とは分けて読みたいところです。

米国ではFMCも監視先に加えます。有報の主要顧客欄には、同社向け売上243.65億円が載っています。ただし全額がアクシーブかは未確認です。FMCの7月29日の決算も既存品の価格圧力を説明しています。米国の販売環境を見る接点として使い、FMC全体の値下げ率をクミアイとの取引単価へ当てはめることはしません。

次は12月、価格と原価が近づいたかを確認します

クミアイ化学の公式IR日程では、本決算は12月予定です。具体日はまだ確認できないため、私は12月1日に正式日程を再確認します。これは会社のイベント日ではなく、確認のために置く日付です。

本決算では、評価損の金額・対象に関する注記、アクシーブの地域別出荷と価格対応、製造コストの説明、農薬事業利益を照らし合わせます。翌期の増益予想が出たら、評価損の反動だけなのか、価格と原価の差も改善するのかを確認する。 次の決算で持ち帰りたい判断軸は、この一点です。

本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません。