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銅高でも非鉄株を一括で見ない――BHPの「価格+35%・生産-3%」が示す分岐

・ 約4分で読めます ・ 文責: マーケット深掘りノート編集部

銅高でも非鉄株を一括で見ない――BHPの「価格+35%・生産-3%」が示す分岐の図解ポスター

銅の価格は上がっているのに、世界最大級の鉱山会社BHPでは銅の生産量が減っています。

2026年7月16日にBHPが公表したFY2026の生産レビューでは、銅の平均実現価格は1ポンド5.74ドルと前年比35%上昇しました。ところが、生産量は195.28万トンで3%減です。さらにFY2027の会社計画は165万〜180万トン。今期実績から7.8〜15.5%減る水準です。

「銅高なら非鉄株をまとめて強気で見てよいのか」。結論は、そうではありません。鉱山権益を持つ会社、鉱石を製錬する会社、銅を加工する会社では、同じ銅高でも利益へ届く経路が違います。

目次
  1. たくさん処理しても、銅が減るのはなぜ?
  2. 銅高なのに製錬会社が苦しくなる理由
  3. 日本株では、どの数字を分けて見る?
  4. 強気と弱気、どこで分かれる?
  5. 次に、いつ何を見るか

たくさん処理しても、銅が減るのはなぜ?

BHPの主力Escondida鉱山を見ると、ねじれの理由が分かります。選鉱設備へ通した鉱石は1億4,243.6万トンで4%増えました。しかし鉱石中の平均銅品位は1.02%から0.90%へ13%低下し、選鉱後の銅生産は7%減りました(BHP、2026年7月16日)。

同じ量の銅を得るには、以前より多くの岩石を掘り、運び、砕く必要があります。処理量を増やしても、鉱石1トンに含まれる銅が減れば生産は伸びません。燃料、重機、選鉱設備、減価償却の負担も増えます。

鉱山の利益は、単純化すれば「銅価格×販売量-採掘・選鉱コスト」です。価格が上がれば追い風ですが、数量減と単位コスト上昇がその一部を打ち消します。価格だけを見ると、地下で進む品位低下を見落とします。

この読みの前提は、BHPの品位低下と次期数量計画がすぐには改善しないことです。逆に、10月20日の次回生産レビューで品位や回収率が改善し、FY2027計画が180万トンを超える方向へ上方修正されれば、この懸念は弱まります。

銅高なのに製錬会社が苦しくなる理由

さらにややこしいのが製錬です。鉱山会社は、掘った銅精鉱を純度の高い銅へ加工してもらうため、製錬会社へTC/RCという手数料を払います。

精鉱が足りず、製錬設備が余っていると、製錬会社は原料を確保するため手数料を下げざるを得ません。Reutersが報じた2026年の中国指標は1トン0ドル、1ポンド0セント。2025年に日本勢が確保した1トン25ドル、1ポンド2.5セントから大きく低下しました。

つまり、銅価格が高くても、製錬の加工賃が縮めば製錬利益は苦しくなります。三菱マテリアルはTC/RC低下が製錬採算を悪化させたと説明し、銅精鉱の調達・製品販売をPan Pacific Copperへ統合する計画です。

「銅が高い」と「製錬会社が儲かる」は別の話です。 銅価格、鉱石の数量、加工手数料は三つの別々の市場として見る必要があります。

日本株では、どの数字を分けて見る?

住友金属鉱山(5713)は、鉱山権益と製錬の両方を持ちます。2026年3月期は売上高1兆7,415.86億円、親会社帰属利益1,762.90億円でした。一方、営業キャッシュフローは1,018.10億円、設備投資は1,374.90億円、棚卸資産は7,404.74億円です(EDINET〔edinet-insight〕)。

利益は大きく回復しても、営業CFは利益を下回り、棚卸資産は前期から1,726.74億円増えました。金属価格が上がる局面では在庫の評価額や必要運転資金も膨らみます。住友金属鉱山は最終利益だけでなく、権益分生産量、資源・製錬の利益、棚卸資産、営業CFを一組で見るべきです。

三菱マテリアル(5711)や三井金属(5706)では、銅価格よりTC/RCと製錬再編の効果が重要です。コマツ(6301)や日立建機(6305)には別の経路があります。品位が下がり、同じ銅量を得るための採掘・運搬量が増えれば、大型機械や部品保守の需要が増える可能性があります。ただし鉱山会社が投資を延期すれば、この経路は反転します。

8月9日の記事「銅は最高値なのに『余っている』? 価格を押し上げる在庫の場所」では、世界全体の需給と在庫の場所を分けました。今回はさらに、同じ銅価格を受ける企業の中でも利益経路を分ける必要があります。

強気と弱気、どこで分かれる?

強気シナリオは、鉱山の供給制約が続き、銅価格が高止まりすることです。鉱山権益を持つ企業の資源利益には追い風となり、品位低下による処理量増は鉱山機械の保守需要へ波及し得ます。

弱気シナリオは、精製銅の余剰が表面化して価格が下がる一方、品位低下によるコスト増が残ることです。ICSGは2026年に9.6万トン、2027年に37.7万トンの精製銅余剰を予測しています。価格と数量が同時に悪化すれば、鉱山会社には二重の逆風です。

だから、銅関連を一つのテーマでまとめないことが大切です。鉱山権益型は価格・品位・生産量、製錬型はTC/RC、加工型は価格転嫁と在庫回転で分けます。

次に、いつ何を見るか

まずBHPの8月18日FY2026通期資料で、銅部門のUnderlying EBITDA、フリーキャッシュフロー、最終配当、Jansen減損の確定額を確認します。次は10月13日のICSG会合で、2027年の精製銅余剰37.7万トンが維持されるかを見ます。

10月20日のBHP生産レビューではEscondidaの品位、処理量、回収率、生産量を並べます。11月10日の住友金属鉱山2Qでは、資源・製錬の税引前利益、銅価格前提、棚卸資産、営業CFを確認します。ウォッチリストは「銅関連」ではなく、この四つの公表日と利益経路で組み直します。

本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません。