マーケット深掘りノート

会社の「解体価値」の18倍。この株価、高すぎませんか?

会社の「解体価値」の18倍。この株価、高すぎませんか?の図解ポスター

PBR18.5倍、という数字

半導体検査装置メーカーのアドバンテストという会社をご存知でしょうか。AIサーバー向けの半導体を検査する装置で世界トップシェアを持つ会社です。

この会社、2026年3月期の決算(EDINETで確認できる有価証券報告書ベース、株価は決算期末時点)でPBRが18.52倍でした。PBRというのは、株価が会社の純資産(ざっくり言うと「今すぐ解散したら株主に返ってくるはずのお金」)の何倍で取引されているかを示す指標です。1倍なら「解散価値と同じ値段」、2倍でも「割高気味」と言われることが多い中で、18.52倍です。ついでにPER(利益の何年分で株が買えるか)も39.46倍、ROE(自己資本でどれだけ稼いだか)は57.6%という、かなり突き抜けた数字が並んでいます(出所: EDINET、edinet-insight)。

なぜこんなことになっているかというと、理由ははっきりしています。純利益が前の期比でプラス132.9%、過去最高益だったからです(出所: EDINET)。AIブームに伴う半導体投資の急拡大を、この会社がまさに検査装置というかたちで一手に引き受けている状態です。

その決算、実はものすごく混雑した日に発表されます

ここからが今日お伝えしたい本題です。アドバンテストの次の決算発表は7月29日(水)の15時30分に予定されています(同社IRカレンダーより)。

普通ならこれだけで一つのニュースなのですが、実はこの7月29日という日、他にもいろんなことが同時に起きます。

数えてみると、1つの週の中に、独立した大きなニュースが8つ折り重なっていることになります。

なぜ「重なる」ことが問題なのか

普通、ニュースは1つずつ来て、市場もそれを1つずつ消化します。でも今回は、性格の異なる材料が数十時間の間にまとめて来ます。

たとえば7月24日、韓国のKOSPI(株価指数)がサイドカー(先物急変動時にプログラム売買の売り注文を一時的に止める仕組み)を発動する場面がありました。このときも、原因は1つではなく、アメリカの新しい関税の発効、AI関連企業の決算を受けた懸念、原油高からの利上げ観測という3つが同じ日に重なった結果でした(出所: Business Recorder)。

今回の7月29日前後は、これと同じような「材料の重なり」が、より大きな規模で起きる可能性がある週です。仮にアドバンテストの決算がわずかでも市場の期待(PBR18.5倍という高い期待)を下回った場合、普段ならその会社だけの話で済むところ、同じ日のFOMCやSKハイニックスの反応と混ざり合って、原因を切り分けにくい大きな値動きになるかもしれません。これはあくまで「起きうる可能性」の話であり、実際にそうなるかは結果を見るまでわかりません。

CXMTの上場も、地味に効いてくる話

7月27日に上場するCXMTは、調達したお金を主に生産能力の拡大に使うとみられています(この点の詳細は今回確認できていません)。これは、7月中旬に日本の半導体メーカー・キオクシアの株価が急落した「メモリーの供給過剰懸念」という話の続きにあたります。CXMTがさらに生産を増やすとなれば、この懸念に新しい燃料が投下されることになりかねません。

一方で、市場の一部には強気な見方もあり、上場後の時価総額が3兆〜5兆元(約4,440億〜7,400億ドル)まで拡大するのではという声も出ています(出所: BigGo Finance)。ただしこれはあくまで思惑段階の数字で、確定した事実ではない点は区別しておきたいところです。

投資家として何を見るか

日本銀行の会合については、エコノミスト52人への調査(7月16〜22日実施、Bloomberg)で全員が今回の据え置きを予想していますが、次の利上げ時期については12月が50%、10月が40%と割れています。つまり日銀は「様子見」の姿勢ですが、アメリカ側は逆に「利上げ観測が急に強まっている」という、方向性がねじれた状態にあります。それでもドル円は163円台後半で推移し、約40年ぶりの円安水準が視野に入っています(出所: みんかぶFX)。金利差だけでは説明しきれない「有事のドル買い」的な力が働いている可能性もありますが、これは仮説の域を出ません。

私が来週見ているポイントは次の3つです。

  1. 7月29日のアドバンテスト・SKハイニックス決算。AIメモリー・半導体需要の「勢い」が本当にこのペースで続くのか
  2. 7月29日のFOMC。据え置きだとしても声明・会見のトーンがタカ派かハト派か
  3. 7月30〜31日の日銀会合。次の利上げが10月に前倒しされるシグナルが出るかどうか

株価が「解散価値の18倍」まで買われるのは、それだけ強い期待の裏返しです。その期待が来週、複数の角度から一気に検証される。そんな1週間になりそうです。

本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません。