1カ月で64%下落した株、今日15時30分に運命が決まります

「天国か地獄か」——ある証券情報サイトが、今日発表される決算をこう表現しました。
主役はキオクシアホールディングス。パソコンやスマートフォン、AIデータセンターに使われるNAND型フラッシュメモリーの大手です。この会社の株価が、6月22日の取引時間中に一時112,700円まで買われ(その日の終値は108,700円)、7月30日には39,500円まで下落しました。終値どうしで比べると1カ月あまりで約64%の下落です。そして今日、7月31日15時30分に決算が発表されます。
数字だけ見ると「なぜそんなに下がったのか」「今日また何が起きるのか」と思う方も多いはずです。実はこの1週間、半導体メモリーの世界では「AIバブルへの懐疑」から「やっぱりAI需要は本物だ」という空気への揺り戻しが、驚くほど短い時間で起きていました。
何が起きたか
まず米国の話からです。7月30日(現地時間)、韓国のサムスン電子が2026年4-6月期の確定決算を発表しました。売上高は171.5兆ウォンで過去最高、営業利益は89.49兆ウォンと前年同期比で+1,813.8%(約19倍)という驚異的な伸びでした。AI向けの高性能メモリー(HBM)の需要が、供給を上回る状態が続いていることが理由です。
同じ日、証券大手UBSは韓国のSKハイニックス(米国上場のADR)について、新規に「買い」の投資判断を出しました。目標株価は204ドルで、前日終値の126.79ドルから6割以上の上昇余地があるという強気な内容です。担当アナリストは「今の株価は、メモリー業界の収益性が構造的に高まっていることを十分に織り込んでいない」とコメントしています。
この2つのニュースが重なった結果、7月30日の米国市場ではMicronが+18.4%、SKハイニックスが+17.5%、SanDiskが+26.3%と、メモリー関連株が軒並み二桁%の急伸となりました。わずか数日前まで「中国の新興メーカーCXMTが上海に上場し、メモリーが供給過剰になるのでは」という懸念で急落していたのと同じ銘柄群です。
なぜ日本のキオクシアは出遅れているのか
一方、日本のキオクシアはこの反転の波に、まだ十分に乗れていません。7月30日の日経平均は前日比+433円(+0.71%)と3営業日ぶりに反発しましたが、キオクシア単体の上昇は前日比+3%程度にとどまりました。米国のメモリー株が二桁%で急伸した同じ日に、です。
考えられる理由は主に2つあります。1つは、7月28日に発生した熊本地震の影響です。キオクシアではなくソニーやルネサスエレクトロニクス、三菱電機の工場ですが、九州の半導体拠点が地震で操業を止めており、供給網への不安が投資家心理の重石になっている可能性があります。もう1つは、今日の決算発表を前に、投資家が持ち高を調整する動きが優先されたことです。
キオクシアが5月に示した今回の四半期の会社見通しは、売上高1兆7,500億円・営業利益1兆3,000億円(Non-GAAP)でした。市場ではこれをやや上回る、売上1兆8,356億円・営業利益1兆3,701億円という予想も出ています。会社の見通し自体をコンセンサスが超えているという、強気な期待が既に織り込まれている状況です。
投資家として何を見るべきか
今日の決算で注目すべき点は、単に売上や利益の数字が予想を超えるかどうかだけではありません。むしろ重要なのは、今後の設備投資計画や株主還元の方針について、会社がどう説明するかです。数字が良くても、将来の投資計画に慎重な姿勢が見えれば「材料出尽くし」として売られる可能性があります。逆に、需要の強さを裏付ける具体的な説明があれば、米国と同じような反発につながるかもしれません。
もう1つの視点は、今回の反転が「一時的な戻り」なのか「構造的な転換」なのかという点です。UBSは今後、DRAM(別の種類のメモリー)の需要の伸び率が2026年の22%から2027年には36%へ加速すると予想しています。この見立てに他の証券会社が追随するかどうかも、注目に値します。
なお、今日は日本銀行の金融政策決定会合の結果発表も午後に予定されており、総裁会見の内容次第では為替や金利が動き、株式市場全体の地合いにも影響が及ぶ可能性があります。半導体1銘柄の決算だけでなく、その日の市場全体の文脈もあわせて見る必要がありそうです。
まとめ
半導体メモリー業界では、わずか1週間のあいだに「AI投資への懐疑」と「AI需要への確信」が激しく入れ替わっています。サムスンの記録的な決算とUBSの強気な新規「買い」判断は、需要側の強さを裏付ける材料でした。その流れが日本のキオクシアにも及ぶかどうかは、今日15時30分の決算とその後の会社側の説明にかかっています。
数字が予想を超えるかどうかだけでなく、「なぜその数字になったのか」「この先の投資計画をどう語るか」まで見ることで、単なる株価の上げ下げ以上の理解につながるはずです。
本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません。