電算の上期利益予想は2.6倍。年間の稼ぐ力も上がった?

「上期の利益予想が大幅に上がれば、年間の稼ぐ力もその分だけ強くなった」と思われがちです。電算の経常利益予想は上期だけなら約2.6倍になりましたが、通期は据え置きでした。今回は、この差を確かめます。
電算(3640)は、長野県を拠点に自治体や企業、医療機関へ業務システムを提供し、運用・保守まで担う情報サービス会社です。前期の連結売上は約280億円。公共分野が売上の80.5%を占める、自治体向けの比重が高い会社です。前期短信とEDINET(edinet-insight)の有報データで確認しました。
私は今回の開示を、利益の計上時期が早まった効果と、仕事の採算が良くなった効果を分けて読む必要があると考えました。
2.6倍は、何と比べた数字か
9月16日の修正開示で、2026年4~9月の経常利益予想は3.22億円から8.40億円へ上がりました。約2.6倍とは、従来予想との比較です。前年同期の実績16.85億円と比べると、なお約50.1%の減益予想です。
一方、2027年3月期の通期経常利益予想は24.77億円のままです。
ここで年間予想から上期予想を引いてみます。従来は24.77-3.22=21.55億円。修正後は24.77-8.40=16.37億円です。上期が増えた5.18億円だけ、下期に残る差額は小さくなります。
この16.37億円は私の引算であり、会社が別に公表した下期予想ではありません。ただ、上期の増額を通期予想へもう一度足すと、同じ利益を二重に見込むおそれがあることは分かります。
前倒しと内製化は、翌期への効き方が違う
会社の説明には、公共分野の法制度改正に伴う新規案件、高採算案件の下期からの前倒し、一部業務の内製化による外注費削減が並びます。
同じ年度内で案件の計上を早めただけなら、年度全体の利益はその移動だけでは増えません。一方、新しい仕事の獲得や、同じ仕事を少ない費用で処理できるようになった効果は、年間の利益を増やす可能性があります。
実際、今回の売上予想の増額は4.50億円なのに、営業利益の増額は5.09億円です。追加の売上だけでなく、案件の採算や既存業務を含む費用も変わっていると読む必要があります。ただし、会社の説明には要因別の金額がありません。増額の全額を前倒しとも、恒久的な改善とも決められません。
確かめたいのは増額の大きさより、前倒しした仕事がなくなった後にも残る利益です。
自治体の移行が終わると、何で稼ぐのか
背景にあるのは、電算の仕事の構成が変わる局面です。
前期の事業説明によると、会社は予定していた168団体すべてで、標準仕様に準拠した行政情報システム「Reams」への移行を完了しました。同じ顧客の同じ移行作業を、翌年も繰り返し売ることはできません。
ただし、移行完了は顧客との仕事が終わることではありません。今期の第1四半期短信では、導入後の運用補助や制度改正への対応が増収増益に寄与しています。中期計画も、継続して収益を得るストック型への転換を掲げています。
つまり、まとまった移行作業で稼いだ後に、導入済みの顧客から運用・更新の仕事を得られるかが重要になります。制度改正の個別開発まで毎年同額で続くわけではないので、公共向け売上をすべて安定した定額収入とみなすこともできません。
内製化もこの変化と合わせて見ます。既に雇っている技術者が外注作業を担えれば、外部への支払を減らせます。しかし、社内の人件費が増えたり、仕事が減って人員が余ったりすれば、外注費の減少だけでは利益は守れません。
9月7日の買収開示でも、産業分野の開発体制を強め、外注工数をグループ内で担う狙いが示されています。ただし会社は今期への影響を軽微としており、今回の上方修正をその買収の成果と決め付けることはできません。
10月30日は、利益額の横に原価も置く
私なら電算の監視表を、上期の利益進捗だけから「前倒し後の案件」「運用・制度改正の収益」「外注費と社内費用を含む総原価」へ広げます。
新しい仕事が続き、総原価を抑えられるなら、今回の改善が持続するという見方は強まります。反対に、下期の案件が伸びず、機器調達費や人件費が削減効果を打ち消すなら、その見方を改めます。会社が通期を据え置いた理由にも、下期の受注やサーバーの納期・調達コストの精査が挙がっています。
上期の予想比改善と、年間の収益力の改善は、確認する資料を分ける必要があります。
公式IRカレンダーでは、中間決算は10月30日、第3四半期決算は2027年1月29日の予定です。まず中間短信の公共・産業分野別の利益、売上原価、通期予想の説明を確認します。その後、第3四半期累計から中間実績を引いて、下期入り後も利益が続いているかを追います。次に見るのは「2.6倍」という見出しの更新ではなく、前倒しの後に残った仕事の採算です。
本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません。公開データと筆者の機械的な差額計算に基づき、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。