有報全部読むノート上場3,800社の有報を、全部読む

積水ハウス16%増益は、米国住宅の回復を意味するのでしょうか

・ 約4分で読めます ・ 文責: けいすけ@有報全部読む

積水ハウス16%増益は、米国住宅の回復を意味するのでしょうかの図解ポスター

「住宅会社の営業増益は、新築住宅需要の回復を示す」と思われがちです。ところが積水ハウスの中間決算は、連結営業利益が16.0%増える一方、国際事業は93.2%減益でした。決算短信の内訳から、この食い違いを確かめます。

積水ハウスは、個人向けの注文住宅、土地所有者向けの賃貸住宅を建て、その後の管理や改修も担う大手住宅会社です。国内外で不動産開発も手掛け、米国では戸建住宅を販売しています。直近の通期売上高は約4.2兆円。EDINET(edinet-insight)で取得し、会社の有価証券報告書と照合した数字です。「家を建てて売る」以外にも利益の入口があります。

目次
  1. 増えた利益は、どこから来たのか
  2. 米国は「買収の会計負担だけ」でもない
  3. 据え置きの計画にも、入れ替わりがあります
  4. 次に見るのは、利益率と計上時期です

増えた利益は、どこから来たのか

9月10日発表の上期決算で、連結営業利益は1,803.70億円でした。前年同期との差は248.97億円です。そのうち都市再開発の増益額が222.66億円を占める一方、国際事業は141.98億円減っています。国内の賃貸住宅管理なども支えました。いずれも今回のセグメント開示からの計算です。

都市再開発では、開発した物件の売却が当初計画より前に進みました。この利益は開発会社の通常の営業活動によるものです。ただし、完成物件をいつ引き渡すかで、利益が計上される半期は変わります。管理料を継続的に受け取る事業と、同じ速さで利益が積み上がるわけではありません。

私は今回の増益を、米国住宅の回復より、国内の管理事業と物件売却が海外の弱さを補った決算と読みます。 連結の増益率を住宅市場全体の需要に置き換えると、この違いを見落とします。

米国は「買収の会計負担だけ」でもない

米国戸建ての引渡戸数は、前年同期の6,064戸から4,572戸へ減りました。営業損益は125億円の赤字です。買収時の資産評価やのれん償却などの影響を除いても、営業利益率は3.8%から0.9%へ低下しました。決算概要では、完成在庫の販売を進めたことが利益率低下の背景と説明されています。

家が売れても、低採算の在庫が多ければ利益は薄くなります。引渡戸数が減れば、営業拠点などの費用も少ない売上で負担します。会計上の買収負担を取り除くだけでは解決しない、販売する商品の構成と数量の問題が残っています。

会社は、購入者の注文に応じて建てるBTOへの移行や経費削減を進めています。これは、先に建てた在庫を売り切る経営から、注文段階で採算を確かめる経営への修正と捉えられます。ただし、新しい受注の採算がよくても、過去に仕入れた低採算の区画を販売している間は、決算の利益率にすぐ表れません。

ここが構造を見るポイントです。必要なのは受注の増加だけでなく、採算のよい注文が実際の引き渡しに置き換わることです。引渡戸数と調整後利益率がともに改善するなら、私の「回復をまだ確認できない」という判断は見直せます。

据え置きの計画にも、入れ替わりがあります

通期営業利益計画は3,500億円のままです。しかし期初計画に対し、国内事業は165億円上振れ、国際事業は85億円下振れ、消去・全社は80億円の減益方向へ変わりました。経営計画資料を読むと、合計が同じでも、利益を担う事業が違います。

さらに都市再開発の上期利益273.52億円を、修正後の通期計画275億円から引くと、下期に残る額は1.48億円です。これは開示数字からの差額で、会社が別途示した下期予想ではありません。売却時期による偏りが大きいため、上期の勢いをそのまま下期に延ばせないことが分かります。

一方、米国の賃貸住宅開発では、売却済み物件の収益を次の四半期に計上する予定です。国際事業の利益が戻っても、それだけで米国戸建てが回復したとは言えません。事業の多様さが利益を支える強みと、住宅需要の弱さは両立します。

保有判断の前提にするなら、「連結計画を守れるか」と「米国戸建てが自力で採算を戻せるか」を別々に確認したい決算です。 物件売却の後ずれと戸建ての低採算が重なる場合は、国内の上積みで補えるかを再点検します。

次に見るのは、利益率と計上時期です

まず9月11日提出予定の半期報告書で、在庫・資金回収とセグメント注記を確認します。提出予定日であり、現時点で提出済みとは扱いません。

米国の比較材料は住宅大手Lennar(LEN)です。同社の発表予定は米国時間9月16日引け後、説明会は17日です。販売促進費用や引渡見通しを見れば、市場共通の弱さなのか、積水ハウスの在庫構成の問題なのかを切り分ける手掛かりになります。

次に積水ハウスのIRカレンダーにある10月9日の国内受注速報で、国内の補完力を確認します。米国戸建ての引渡戸数・調整後利益率と、海外の物件売却の収益計上は12月上旬予定の第3四半期決算で照合します。具体日は未公表です。次の決算では、連結利益の増減より先に、この内訳を開きます。

本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません