誰も話題にしていないけれど、効くかもしれない話――高市内閣支持率急落と「副首都法案」

導入
中東情勢、AI投資への懐疑、米国の関税措置――ここ数週間、マーケットの話題はもっぱら海外発のニュースに占められてきた。だが、足元で静かに進行している国内の政治的な変化にも、目を向けておいたほうがいいかもしれない。
高市内閣の支持率が、この1カ月ほどで急速に下がっている。NHKの調査で58%、時事通信の調査で49.0%、そして別の民間調査を分析した記事では41.0%まで下落し、支持と不支持が初めて逆転したと報じられている。
何が起きたか
まず数字から整理したい。NHKの調査(2026年7月)では支持率58%、不支持率27%。前月からは2ポイントの下落だ。時事通信の調査(7月10〜13日実施)では、支持率は49.0%まで下がり、前月比で5.3ポイントの下落、そして高市内閣が発足して以来、初めて5割を下回った。
さらに、Yahoo!ニュースのエキスパート記事(大濱崎卓真氏による分析)を見ると、7月第1週の時点で支持率44.6%・支持と不支持が初めて逆転、続く7月第2週(7月13〜19日実施の調査ベース)では支持率41.0%・不支持率が5割を超えたとされている。
調査によって数字にはばらつきがあるが、方向性は共通している。支持率は下がり続けており、下落のペースは決して緩やかではない。
なぜ下がっているのか
背景として挙げられているのが「副首都法案」だ。正式名称は「副首都機能の整備の推進に関する法律案」。災害が起きた際に首都機能を維持するための枠組みをつくる、という趣旨の法案で、自民党と日本維新の会が共同で提出した。
この法案自体は、7月15日に衆議院本会議で可決され、参議院に送られている。問題は、その「進め方」にある。与党は国会の終盤で、この法案や衆院定数削減法案の審議を強行し、野党が一時的に審議を拒否するという事態を招いた。
さらに、法案の中身についても疑問の声が出ている。副首都の要件として、耐震性や地盤の強固さといった、災害対策上もっとも重要であるはずの項目が明記されていない。一部からは「実質的には大阪ありきの法案ではないか」という批判も出ている。世論調査でも、この法案を今の国会で成立させる必要があるかという問いに対し、「必要がある」と答えたのは26%にとどまり、「必要はない」が60%を占めた。
つまり、支持率下落の一因は、法案の中身そのものへの反対というより、「なぜそこまで急いで、押し切ってまで通そうとするのか」という進め方への疑問にある可能性が高い。
今週が分水嶺
国会の会期は7月25日まで延長されている。参議院での日程を見ると、本日7月22日に特別委員会で審議入り、23日に総務委員会との連合審査と参考人質疑、24日に委員会採決、そして25日の本会議で成立を図るというのが与党の想定スケジュールだ。
ただし、参議院では与党が少数のため、このまま可決される保証はない。もし否決された場合、与党は衆議院で3分の2以上の議席を持つことを背景に、憲法上の「衆議院の優越」規定に基づいて再可決を試みる可能性がある。そうなれば、与野党の対立は一段と先鋭化するだろう。
なぜマーケットにとって意味があるのか
正直に言えば、この話題がマーケットに与える直接的な影響は、まだ数字としては確認できていない。為替やJGB(日本国債)、日経平均への明示的な相関を示すデータは、この記事を書いている時点では見当たらない。
それでも気に留めておきたい理由がある。この数カ月、マーケットは「骨太の方針」における日銀独立性の明記や、GPIFをめぐる政府高官の発言といった、政治と金融政策の接点を注視してきた。これらはいずれも、高市内閣という政治的な基盤の上に成り立っている政策コミットメントだ。
内閣の支持率が急落し、政治的な基盤が揺らいでいるとすれば、こうしたコミットメントの実行力や持続性にも、いずれ疑問符がつく可能性がある。もちろん、これは現時点での推論であり、実際にそうなるという確証はない。ただ、海外発のニュースに気を取られている間に、国内で静かに進行しているこの変化を見落とさないようにしたい。
X(旧Twitter)のトレンドを見ても、この話題への言及はほとんど見当たらない。エンタメ系のニュースが上位を占める中、政治的な話題は相対的に埋もれている。だからこそ、「まだ大きく騒がれていないが、じわじわと効いてくるかもしれない話」として、この動きを記録しておく価値があると思う。
本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません。