マーケット深掘りノート

好決算なのに株価が下がる。AlphabetとTeslaが見せた、同じパターン

好決算なのに株価が下がる。AlphabetとTeslaが見せた、同じパターンの図解ポスター

導入

7月半ばから続いてきた「AI投資は本当に回収できるのか」という懐疑論争に、7月22日、初めての実質的な答えが出た。AlphabetとTeslaの決算発表である。

結果は、奇妙なほど似通っていた。両社とも売上高は市場予想を上回る好決算だった。それにもかかわらず、株価はそろって下落した。Alphabetは時間外で3.6%程度、Teslaは決算後に4.0%程度の下落だ。何が市場を失望させたのか。答えは「設備投資」と「キャッシュフロー」にある。

Alphabetの決算が示したもの

Alphabetの4-6月期は、数字だけを見れば非常に強い内容だった。連結売上高は前年同期比24%増の1,198億ドル。特にクラウド事業は82%という驚異的な成長を見せ、営業利益率も32%から34%へ改善した。

問題は設備投資だった。今期の設備投資額は449億ドル、前年同期からほぼ倍増している。そして2026年通期の設備投資ガイダンスは、4月時点の「最大1,900億ドル」から、今回さらに「1,950億〜2,050億ドル」へと引き上げられた。2月時点の当初計画が1,750億〜1,850億ドルだったことを考えると、年初から2度目の上方修正になる。

CFOのアナット・アシュケナジ氏は「需要拡大に対応するための能力供給の前倒しが増額の主因」と説明している。需要があるからこそ投資を増やす、という理屈自体は理解できる。だが、この投資ペースの結果として現れたのが、四半期のフリーキャッシュフローの赤字転落だ。営業活動によるキャッシュフローから設備投資を差し引いた金額は、マイナス58.55億ドル。少なくとも直近4四半期の中では、初めてのマイナスである。

Teslaの決算が示したもの

Teslaの4-6月期も、売上高だけを見れば好調だった。総売上高は282.4億ドル、前年同期比26%増で市場予想を上回った。自動車事業の売上高も23%増と伸びている。

しかし収益性は明らかに悪化した。営業利益率は前年同期の4.1%から1.4%へと急低下し、営業利益そのものは57%減の3.98億ドルにとどまった。非GAAPベースのEPSは0.33ドルで、市場予想(0.51〜0.53ドル程度)を大きく下回っている。

そして設備投資は前年同期比142%増の57.9億ドル。フリーキャッシュフローは前年同期の1.46億ドルの黒字から、10.9億ドルの赤字へと転じた。

二つの決算に共通する構図

AlphabetとTesla、事業内容も規模も全く異なる二社が、同じ四半期に、同じような構図を見せた。売上高は市場予想を上回るのに、設備投資が増加し、キャッシュフローが悪化し、株価が下落する。

これは、7月半ばから続いてきたAI capex懐疑論争にとって、重要な意味を持つ。これまでの懐疑論は、韓国半導体株の乱高下や、大手証券会社によるハイパースケーラー投資の予測といった、いわば間接的な材料に基づいていた。今回初めて、当事者である米ビッグテック自身の決算という、直接的なファンダメンタルズデータによって、その懐疑が裏付けられた形になる。

もう一つ興味深いのは、これが7月半ばに報じられた「見えざる債務」の話と表裏の関係にあるという点だ。データセンターのリース契約やGPU購入契約を、貸借対照表に乗らない特別目的事業体(SPV)経由で調達する手法が、米ビッグテックの間で広がっていることは、以前の記事でも触れた。本業のキャッシュフローだけで設備投資を賄いきれなくなれば、こうした簿外調達への依存度は、業界全体でさらに高まる可能性がある。実際、Alphabetは6月に496億ドルの株式・優先株式による資金調達を行い、4-6月期には203億ドルの社債発行も実施しており、キャッシュフローの悪化を外部調達で補っている実態がうかがえる。

この構図をどう見るか

ただし、二社の状況を同じ理由に帰結させるのは早計だろう。Teslaの利益率低下には、自動車事業の価格競争や規制クレジット収入の減少といった、AI投資とは別の要因も大きく関わっている。設備投資の増加とキャッシュフロー悪化という表面的なパターンは共通していても、その中身は異なる。

とはいえ、市場が今、企業の「成長性」よりも「足元のキャッシュフロー」を重視する局面に入りつつあることは、この二つの決算から読み取れる。投資の規模がどこまで拡大を続けるのか、そしてそれが実際にどれだけの収益として回収されるのか。この問いへの答えは、まだ出ていない。

7月23日夜(米国時間)には、Intelの決算発表が控えている。AI capexという同じテーマをめぐる、3社目の試金石になる。

本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません。