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CPIは2%未満なのに、なぜ日銀の利上げ観測は消えないのか

・ 約4分で読めます ・ 文責: マーケット深掘りノート編集部

CPIは2%未満なのに、なぜ日銀の利上げ観測は消えないのかの図解ポスター

「物価目標は2%なのに、7月の全国コアCPIは1.8%。それなら日銀の利上げは遠のくのでは?」

数字だけを見ると、その疑問は自然です。ところが市場では、9月17~18日の日銀会合で追加利上げが検討されるとの見方が残っています。理由は、日銀が1本のCPIだけでなく、補助金で動く価格、輸入コストで動く価格、賃金で動く価格を分けて見ているからです。

今回の1.8%は「物価圧力が消えた」という数字ではありません。投資家が見るべきなのは、2%との距離より、物価上昇が財からサービスへ残るかどうかです。

目次
  1. 1.8%は予想どおり。それでも中身は再加速です
  2. なぜ「2%未満=利上げなし」にならないのでしょうか
  3. 銀行株は「利上げ=利益増」と決めつけない
  4. 不動産・輸出・内需にはどう伝わるのか
  5. 投資家は何を、いつ確認すればよいでしょうか

1.8%は予想どおり。それでも中身は再加速です

総務省が8月21日に公表した7月の全国CPIは、総合が前年同月比1.9%、生鮮食品を除くコアが1.8%、生鮮食品とエネルギーも除く指数が1.9%上昇しました。コアは市場予想と一致しており、上振れサプライズではありません。

それでも、コアは5月1.4%、6月1.6%、7月1.8%と2カ月続けて加速しています。エネルギーも除く指数も6月の1.7%から1.9%へ上がりました。Reutersによると、財価格は2.7%、サービス価格は1.2%上昇。サービスも6月の1.1%からわずかに加速しています。

今回は2025年基準への切替え後、初めての全国CPIでもあります。総務省は過去分を遡及公表し、2020年基準も年末まで併記します。基準の違う指数水準を直接つなぐのではなく、公式の前年比と内訳で比べるのが安全です。

なぜ「2%未満=利上げなし」にならないのでしょうか

コアCPIにはエネルギーが入ります。政府が電気・ガス・燃料の負担を補助すれば、輸入原油や卸売価格が高くても、家計が払う価格は抑えられます。Reutersは、コアが日銀目標を7カ月連続で下回った主因として燃料費補助を挙げています。

一方、生鮮食品とエネルギーを除く指数には、加工食品、耐久財、外食、修理、家賃などが残ります。円安や原材料高はまず財へ届き、人手不足と賃上げは時間をかけてサービス価格へ届きます。

ここが重要です。財価格は為替や商品市況が反転すると比較的速く鈍りますが、人件費や契約改定を通じるサービス価格は動きが遅く、いったん上がると粘りやすい傾向があります。財とサービスの違いは、姉妹ブログの「財とサービス別CPIの読み方」でも整理しています。

日銀にとっての分岐は、コアが一度2%を超えたかではなく、補助金が切れても価格転嫁がサービス側に残るかです。

銀行株は「利上げ=利益増」と決めつけない

利上げの影響は業種で逆になります。銀行では、短期金利上昇が貸出金利へ伝われば利ざやの追い風です。MUFGは円金利が0.25%上がった場合、純金利収益への影響を1年目1,000億円、2年目1,500億円、3年目1,800億円と試算しています。ただし、バランスシートが変わらず、市場金利も政策金利と同じ幅だけ上がる前提です。

預金金利が早く上がる、短期金利が長期金利より上がる、保有債券に評価損が出る場合は、効果が小さくなります。MUFG自身も、短期金利が長期金利より大きく上がれば純金利収益に逆風になり得ると開示しています。

2026年3月期のMUFGは総資産431兆7,315億円、親会社株主帰属純利益2兆4,272億円、連結ROE11.34%でした(EDINET〈edinet-insight〉)。規模が大きいからこそ、政策金利1本ではなく、預貸金利差、預金ベータ、債券評価損、信用費用を分けて見る必要があります。

不動産・輸出・内需にはどう伝わるのか

三井不動産(8801)や三菱地所(8802)、J-REITには、借換金利と物件評価の割引率上昇が逆風です。ただし、賃料改定が進み、固定金利期間が長ければ吸収できます。確認点は「金利が上がったか」より、賃料増額率が支払利息の増加を上回るかです。

トヨタ(7203)やソニーグループ(6758)には、利上げ観測による円高が円換算利益の逆風になります。反対に、ニトリHD(9843)や良品計画(7453)には輸入仕入れ原価の軽減余地がありますが、金利とサービス物価が家計の裁量支出を削れば、客数が弱くなる可能性があります。

つまり、同じ利上げでも「銀行は追い風、不動産と輸出は逆風」と機械的には分けられません。直近のGDPも、プラス成長の一方で内需は弱い内容でした。詳しくは「給料は増えたのに、なぜ買い物は増えない?」で確認できます。

投資家は何を、いつ確認すればよいでしょうか

強気シナリオは、サービス物価が1.2%以上を保ち、日銀が9月に利上げし、長短金利差が広がるケースです。銀行の貸出収益には追い風ですが、高PER株や不動産の割引率には逆風になります。

弱気シナリオは、内需停滞でサービス物価が鈍り、日銀が据え置く一方、財政や原油を理由に長期金利だけが高止まりするケースです。この場合、銀行の利ざや改善は限られ、不動産の借換負担や企業の信用費用が残ります。

ウォッチリストには「全国コアCPI」だけでなく、サービス物価、2年・10年の円金利差、ドル円を加えてください。 8月27日の氷見野副総裁の講演・発言で物価と内需の重み付けを確認し、9月17~18日の日銀会合では政策金利、声明の物価上振れ評価、18日15時30分の総裁会見を追います。次の全国CPIは9月18日8時30分。コア、エネルギー除く指数、財、サービスの4本を同じ表で確認するのが次の一手です。

本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません。