営業利益42.7%減でも強いのか――ハニーズ「低価格で利益を残す力」を読む
ハニーズホールディングスの営業利益は、2024年5月期の80.59億円から2026年5月期の46.19億円へ、2年で42.7%減りました。それでも2026年5月期の営業利益率は8.2%です。比較可能な2025年5月期の10.2%は、小売業318社の上位四分位6.2%を上回りました。
落ち方は大きい。しかし、残っている利益率も高い。この二つを同時にどう読むべきでしょうか。
今回の問いは一つです。ハニーズの利益は、景気や流行にたまたま恵まれた結果なのか。それとも、低価格帯でも利益を残せる仕組みがあり、その力は今後も続くのか。
市場は同社を、低成長・低ROEの国内アパレル小売と見ているようです。同業より高い利益率が残るなら、実力を弱く見過ぎている可能性があります。これがエッジ仮説です。
目次
この会社は何をしている会社か
ハニーズは、10代から60代までの女性向け衣料を自社で企画し、商業施設の店舗とECで販売する会社です。2026年5月期の売上高は561.82億円、国内店舗は864店、連結正社員は6,921人。東証プライム上場で、EDINETの業種は小売業です。同業より高い営業利益率が特徴で、ミャンマーなどの生産網まで組み合わせて採算を作っています。
まず、利益の落ち方を分解する
有報と会社資料から売上高、粗利率、販管費、営業利益を並べました。業界比較はEDINET DBのpeer-comparisonで、決算年がそろう2025年5月期を採用しました。
| 指標 | 2025年5月期 | 2026年5月期 | 2027年5月期会社予想 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 577.01億円 | 561.82億円 | 565.00億円 |
| 売上総利益率 | 59.2% | 58.9% | 58.2% |
| 販管費 | 281.68億円 | 284.53億円 | 289.00億円 |
| 営業利益 | 59.06億円 | 46.19億円 | 40.00億円 |
| 営業利益率 | 10.2% | 8.2% | 7.1% |
この表から言えるのは、減益の主因が一つではないことです。2026年5月期は売上高が2.6%減り、粗利率も0.3ポイント下がる一方、販管費は1.0%増えました。さらに会社予想では、翌期も粗利率低下と販管費増が続きます。売上減だけなら固定費負担の問題ですが、今回は商品の売れ方、仕入れコスト、店舗運営費の三方向から利益が押されています。会社の2026年5月期決算説明資料(2026年7月7日)
競争力は「値上げ」より、供給網と在庫運営にある
2025年5月期の営業利益率10.2%は、小売業の中央値3.4%、上位四分位6.2%を上回り、318社中33位でした。ただし、広い小売業分類であり、国内婦人服だけの順位ではありません。それでも低価格帯でこの採算を残した点は重要です。
理由は価格決定力より、コストと在庫の仕組みにあります。2026年5月期の商品調達はミャンマーが54.1%を占め、そのうち自社生産子会社HGIが30.2%でした。企画、発注、生産、店舗販売までの距離を短くし、外部卸の取り分を抑えられる構造です。2025年5月期のセグメント開示では、国内販売事業の営業利益率は10.5%。一方、ミャンマーの縫製事業は、グループ内売上17.71億円に対して0.54億円の営業赤字でした。工場単体で稼ぐより、国内販売の原価と供給を支える役割が大きいと読めます。
反対に、値上げで押し切れる会社ではありません。2026年5月期は価格改定で一人当たり買上点数が前期比101.6%になったものの、客数は99.7%、一点単価は96.9%、既存店売上は98.1%でした。会社は、春物在庫の値下げ、商品鮮度の短さ、猛暑の長期化を減益要因に挙げています。安くすれば客数まで戻る、という結果ではありませんでした。
競争力は残っています。ただし、それは顧客に高い価格を受け入れてもらう力ではなく、外れた商品を早く修正し、低い原価で売り切る力です。
構造的には、需要・コスト・資本配分の三つが重い
需要面では、EC売上が70.90億円へ1.2%増え、構成比も12.6%へ0.5ポイント上がりました。しかし、会社が2028年5月期のEC目標を100億円から76億円へ下げたことを見ると、ECだけで店舗客数の弱さを埋めるシナリオは後退しています。2027年5月期の6〜7月累計既存店売上も前年同期比92.7%です。会社の月次データ(2026年8月4日更新)
コスト面では、ミャンマー中心の生産網は優位性であると同時に集中リスクです。有報は、ミャンマーでの生産活動の停滞、為替変動、天候不順をリスクに挙げています。会社は翌期の為替前提を1ドル158〜162円とし、現地の人件費・燃料費上昇も見込んでいます。一方、有報に直接は書かれていない論点は、値下げで買上点数が増えても客数が戻らなければ、原価優位が販管費増に飲まれることです。
資本配分では、2026年5月期末の現預金は151.13億円、自己資本比率は85.2%。営業CF46.59億円から投資CF14.19億円を差し引いたフリーCFは32.40億円で、年間配当15.33億円を上回りました。財務余力はあります。次期は国内の出店・改装に10.04億円、基幹・物流・POSシステムに8.66億円、ミャンマー設備に1.30億円を投じる計画で、すべて自己資金です。
ところが、会社が修正した2028年5月期目標は売上高580億円、営業利益46億円、営業利益率7.9%、ROE5.7%です。従来目標の売上高630億円、営業利益70億円、ROE8.8%から大きく下がりました。会社自身も、数年内に以前の採算へ戻るとは置いていません。
株価は「低PBR」より「5%ROE」を映している
2026年8月24日の終値は1,450円、予想PERは16.17倍、PBRは0.82倍でした。これは有報期末株価ではなく、現値で確認した指標です。Yahoo!ファイナンスの株価履歴
PBRだけなら低く見えます。しかし、会社予想の純利益25億円を発行済み株式2,790万株で割った予想EPSは約89.61円。2026年5月期末BPS1,760.81円に対する予想ROEは約5.1%です。PER16.17倍に5.1%を掛けると、PBRはおよそ0.82倍になります。数字は整合しています。会社の2026年5月期DATABOOK(2026年7月7日)
私は、いまの株価は「財務は堅いが、利益率は7%台、ROEは5%台にとどまる」という会社計画をかなり素直に織り込んでいると読みました。市場とのズレが生まれるとすれば、低PBRそのものではありません。商品鮮度が戻り、営業利益率が会社の2028年目標7.9%を継続的に上回るか、余剰現金の配当・投資・自己株式取得への配分が変わる場合です。
この見立ての前提は、ミャンマーの供給網が安定し、粗利率58%前後を維持できることです。反証条件は明確です。既存店客数が回復しないまま粗利率が58%を割り、在庫回転の悪化や値下げ増によって営業利益率が7%を下回る状態が続けば、「同業より高い採算は競争力として残る」という仮説は外れます。逆に、既存店客数が前年超えに戻り、粗利率と販管費率の両方が改善すれば、会社計画は慎重すぎたと判断できます。
限界と、次に見るポイント
EDINETの業界比較は小売業全体です。2026年5月期と会社予想は決算説明資料を併用し、ミャンマー事業の採算は比較可能な2025年5月期です。PBR・PERも2026年8月24日時点で、株価と会社予想により動きます。
次は二段階で確認します。まず2026年9月初旬、会社IRの「月次データ」で8月の既存店客数、客単価、買上点数を見ます。次に9月下旬の第1四半期決算で、売上総利益率、棚卸資産、販管費率を確認します。前年の第1四半期決算は9月29日公表でしたが、今回の正式日は執筆時点で未確認です。見る場所は会社IRの決算短信と決算補足資料。利益率7%台への低下が一時的か、構造的かを判定する最初の節目になります。
本記事は公開データに基づく機械的な試算であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。