利益率23.1%と1.5%——インフォマートの取引網は第二の収益柱を作れるか
2025年12月期の営業利益率は、FOOD事業が23.1%、ES事業が1.5%でした。同じ「BtoBプラットフォーム」を名乗りながら、採算には約15倍の差があります。
しかも8月27日の変更報告書では、シンフォニー・フィナンシャル・パートナーズの保有割合が24.86%から25.91%へ増えました。オアシス・マネジメントも13.40%を保有し、両者を単純合計すると39.31%です。大株主の動きは目立ちます。しかし、株価を最後に支えるのは事業です。
今回の問いは、FOODでできた企業間ネットワークの競争力をESへ移し、高い利益成長を続けられるのかです。私のエッジ仮説は、市場の関心が大株主による資本イベントへ寄る一方、会社の実力を決める二事業の成熟度の差が見えにくくなっている、というものです。
目次
この会社は何をしている会社か
インフォマートは、外食・ホテル・食品卸の受発注や、業種横断の請求書発行・受取をクラウド化し、利用企業から月額使用料を得る会社です。2025年12月期の連結売上高は188.17億円、従業員856人で、東証プライムに上場しています。サービス業557社の比較では営業利益率15.2%で106位。中央値6.6%、上位四分位12.1%を上回ります。
何を検証したか
EDINETの2025年12月期有報から、セグメントの売上高・営業利益、利用企業数、設備投資、会社が挙げるリスクを確認しました。全社利益率はEDINET DBのサービス業比較、直近業績は2026年12月期第2四半期、株価は2026年9月1日終値636円を使っています。
大株主の保有割合は8月27日提出の変更報告書ベースです。具体的な提案内容は未確認です。以下は事業の数字を見ます。
競争力はFOODで実証済み、ESでは検証中
| 2025年12月期 | 売上高 | 営業利益 | 営業利益率 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| BtoB-PF FOOD | 119.31億円 | 27.57億円 | 23.1% | 売上+19.9%、利益+41.8% |
| BtoB-PF ES | 68.86億円 | 1.06億円 | 1.5% | 売上+21.2%、黒字転換 |
この表から言えるのは、成長率は近くても利益を生む力はまだ別物だということです。FOODが利益のほぼ全てを作り、ESは将来の利益を作るための投資段階をようやく抜けました。
FOODの競争力は、単なる受発注ソフトの機能数ではありません。有報では、受発注の買い手4,311社、売り手48,106社まで広がっています。買い手が増えるほど売り手が接続する理由が増え、逆も働きます。日々の発注、商品規格、請求を取引先と一緒に載せるため、片側だけでは切り替えにくい。企業間ネットワークと業務への定着がスイッチングコストになります。
価格決定力も数字に出ました。会社はFOODの増収要因として、利用企業数の増加に加え、2024年8月の料金改定を明記しています。それでも買い手・売り手は増え、データセンター費の低減が利益増を支えました。値上げ後も数量が伸びた。ここは強いです。
一方、ESの「請求書」企業数124万2,776社は無料利用を含むため、そのまま収益基盤とは読めません。会社自身も、有報で利用企業数、継続利用、月額顧客単価の増加を事業拡大の前提としています。大企業を起点にグループ会社や取引先へ広げる経路はFOODと似ていますが、1.5%の利益率では、ネットワーク効果が採算として完成したとはまだ言えません。
構造的な行方——需要、コスト、資本配分
需要面では、インボイス制度の開始後も大企業とグループ会社への請求書導入が続き、2026年上期の全社売上高は99.89億円、前年同期比11.0%増でした。制度対応の一巡で終わらず、見積・発注・請求をつなぐTRADEへ利用範囲を広げられるかが次の段階です。接続社数の増加が追加機能の採用へ伝われば、顧客単価と継続率の両方に効きます。
コスト面では、売上増とデータセンター費の最適化による営業レバレッジが働いています。ただし2025年の設備投資は21.28億円、2026年のソフトウエア開発等の計画は26.71億円です。2025年の減価償却費13.40億円を上回る投資が続きます。利益率上昇は、開発を止めた結果ではなく、開発負担を売上増で吸収できることが条件です。
資本配分では、2025年の営業CF46.66億円に対し、配当性向は64.1%でした。上場政策保有株はゼロで、売却だけで価値が出る構造ではありません。FOODが生む利益をES、TANOMU、次の機能へ振り向け、投資回収を示す必要があります。大株主2者の存在は、その説明を厳しくする圧力にはなりますが、それ自体が利益を作るわけではありません。
会社が有報で挙げる主なリスクは、新規獲得・継続利用・単価上昇が進まないこと、競争激化、システム障害や情報流出です。有報に明示されにくい論点は、規制対応で増えたES利用が、規制後も追加機能と単価上昇へ移るかです。
株価への含意——改善はかなり先回りされている
9月1日終値636円を、直近確認できるBPS112.76円とEDINET DB収録の会社予想EPS11.92円で割ると、PBRは約5.64倍、予想PERは約53.4倍です。いずれも現値で再計算した概算です。8月28日には大株主の買い増し判明後に株価が13.2%上昇しており、資本イベントへの期待も無視できません。
この評価が織り込むのは、2026年会社予想の営業利益50.00億円、前年比74.6%増だけではありません。売上213.48億円に対する予想営業利益率は23.4%です。つまり市場は、FOODの高採算維持に加え、ESの黒字が一段拡大し、全社が成熟プラットフォームに近づく姿を見ています。
私は、競争力は実在するが、株価はその横展開の成功までかなり読みに行っていると見ます。この読みの前提は、FOOD利益率が20%以上を保ち、ES利益率が1.5%から段階的に上がり、開発投資を続けても営業CFが伸びることです。
反証条件は、ES利益率が5%未満で停滞し、FOOD利益率も20%を割れ、全社利益率が会社予想23.4%へ近づかないことです。逆にES利益率が10%を超え、利用社数だけでなく月額単価も上がるなら、「期待が先行している」という私の見方が外れます。株価の方向を断定するより、この差を追う方が有効です。
限界
業種比較はSaaS企業だけでなくサービス業全体を含みます。請求書の企業数は有料・無料の混在で、有料契約だけの継続率と単価は有報から未確認です。現在のPBRは第2四半期後のBPS、PERは会社予想EPSを使った異なる時間軸の概算です。大株主の保有割合は提出書類の基準日ベースで、両者の共同歩調を意味しません。
次に何を、いつ、どこで見るか
次は2026年10月30日予定の第3四半期決算です。会社IRでの正式日付は9月2日時点で未確認です。インフォマートのIRライブラリーに出る決算説明資料で、FOODの買い手・売り手数、ESの契約企業数と月額単価、両事業の営業利益率、データセンター費、ソフトウエア投資額を確認します。
見る順番は、全社増益率より先にES利益率です。1.5%がどこまで上がったか。それが企業間ネットワークを第二の利益柱へ変えられたかを示します。
データ出所: インフォマート 第28期有価証券報告書、EDINET DB 有報テキスト、インフォマート IR情報、SBI証券・9月1日終値、Yahoo!ファイナンス・株価指標、大株主2者の買い増し(株探、2026年8月28日)(取得日はいずれも2026年9月2日)
本記事は公開データに基づく機械的な試算であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。