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「100%関税」なのに日本は15%? ドローン株を見る前に確認したい原産地の条件

・ 約4分で読めます ・ 文責: マーケット深掘りノート編集部

「100%関税」なのに日本は15%? ドローン株を見る前に確認したい原産地の条件の図解ポスター

「米国がドローンに100%関税」。この見出しだけを見ると、日本製ドローンも米国で一気に高くなるように感じます。

ところが、制度の中にはもう一つ、15%という数字があります。日本からの対象品は、一定の原産地条件を満たせば、既存の関税を含む合計税率が15%以下に抑えられます。つまり、単純に「100%対15%で日本企業が有利」とも、「日本製だから安心」とも言い切れません。

本当に見るべきなのは、機体の組立地ではなく、電池、モーター、制御装置、ソフトウェアまで含めた供給網です。

目次
  1. まず、何に何%か
  2. 日本で組み立てれば15%なのか
  3. ACSLの「6.9倍」は追い風の証拠か
  4. 米国企業なら自動的に勝てるのか
  5. 投資家として次に何を見るか

まず、何に何%か

米ホワイトハウスは2026年8月13日、通商拡大法232条に基づくドローンと部品の輸入調整を発表しました。

2026年9月3日から、最大離陸重量25kg超の機体、熱画像装置を組み込んだ機体、ドッキングステーション、指定された重要部品には100%の関税がかかります。25kg以下の指定機体は25%です。さらに、別の指定部品には2027年2月9日から25%が適用されます。

ここで重要なのが日本向けの扱いです。日本、韓国、台湾、スイス、リヒテンシュタイン、EUは、重要部品と技術の実質的すべてが対象国・地域または米国由来だと輸入者が認証できれば、Column 1と呼ばれる既存税率を含めて15%以下になります。

15%が「追加関税」ではなく「合計上限」だという点は大切です。制度は別ですが、追加率と合計上限を分けて読む考え方は、米Section 301関税の記事でも解説しています。

日本で組み立てれば15%なのか

そう単純ではありません。

今回の条件は、完成機の最終組立地だけでなく、重要部品と技術の由来を見ます。ホワイトハウス自身、米国製を含む商用・産業用ドローンが海外製のモーター、電子速度制御装置、リチウムイオン電池、ドッキングステーションに依存していると説明しています。

たとえば日本で機体を組み立てても、重要部品の多くを条件外の国から調達していれば、15%上限を使えない可能性があります。反対に、部品表とソフトウェアの来歴を整理し、輸入者が認証できる企業には、非対象国製品との価格差が生まれます。

ここからは私の見立てです。今回の政策は「完成機の国籍」を競う制度というより、「どこまで原産地を説明できるか」を競う制度になりそうです。調達先の変更、証明書の整備、米国内生産には費用がかかるため、受注が増えても利益がすぐ増えるとは限りません。

ACSLの「6.9倍」は追い風の証拠か

日本株で直接的な候補になるのが、国産ドローンのACSL(6232)です。

同社の2026年1〜3月期の北米売上は1億7,103万1千円で、前年同期2,467万4千円の約6.9倍でした。米国市場で販売基盤を作りつつあることは確認できます。

ただし、連結売上高は6億1,939万円、純損失は7,303万9千円でした。さらに2025年12月期の有価証券報告書では、研究開発費が13億1,931万9千円、営業キャッシュフローは12億4,649万円のマイナス、期末の現金及び現金同等物は20億1,872万2千円です。出所はいずれも東証適時開示またはEDINET(edinet-insight)です。

北米売上の伸びは確かに追い風です。しかし、投資家が次に見るべきなのは、15%上限を使えるか、部品変更で原価が上がらないか、売上総利益率と営業キャッシュフローが改善するかです。

米国子会社の2025年12月期売上高は9億2,119万8千円で、連結売上高の約35.4%に相当します。米国政策の影響は小さくありません。同時に、現地在庫や生産投資が膨らめば資金負担も増えます。

米国企業なら自動的に勝てるのか

米国のドローン・防衛関連企業には、Unusual Machines(UMAC)、Red Cat Holdings(RCAT)、AeroVironment(AVAV)、Kratos Defense(KTOS)、Ondas Holdings(ONDS)などがあります。

非中国製への置き換えは需要面の追い風になりえます。一方で、米国企業でも海外製の電池やモーターに依存していれば、部品コスト上昇を受けます。ホワイトハウスが米国内の新工場に関税免除枠を用意したのは、現在の国内供給だけでは足りないという問題意識の裏返しとも読めます。

AUVSIが紹介したDJIの意見では、従来の中国製ドローンへの25%関税は、米国内の完成機や下流製造を十分増やさず、米国組立品にも中国製部品への依存が残りました。今回の100%関税は置き換えを強く促しますが、代替供給が追いつかなければ、価格上昇や導入延期に向かう可能性もあります。

投資家として次に何を見るか

最初の節目は2026年9月3日の機体関税発効です。次に、署名から120日以内の商務省による再評価があります。暦日では12月11日ごろです。そして2027年2月9日には追加部品への25%関税が始まります。

企業開示では、次の4点を追うと政策効果を見誤りにくくなります。

  1. 対象製品が日本向け15%上限を利用できるか
  2. 電池、モーター、制御装置、ソフトウェアの原産地を開示できるか
  3. 北米売上の増加と同時に売上総利益率が改善するか
  4. 在庫、設備投資、営業キャッシュフローが悪化していないか

今回の政策は、日本企業にとって明確な好材料だけでも、単純なコスト増だけでもありません。100%、25%、15%という税率の差より、その税率を決める証明能力の差が企業業績を分けます。

「関税で受注が増えるか」の一歩先にある、「どの部品を、どこから調達し、いくらの粗利と現金を残せるか」。そこまで確認して初めて、政策ニュースを企業価値の議論につなげられます。

本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません。