マーケット深掘りノート

1週間で3倍。この数字、何だと思いますか?

1週間で3倍。この数字、何だと思いますか?の図解ポスター

サイドカーが発動した日

7月24日、韓国の株式市場でサイドカーが発動しました。先物価格が急変動したときに、プログラム売買の売り注文を一時的に止める仕組みです。終値では前日比マイナス5.72%、日中には一時マイナス6%近くまで下げた場面もありました。日経平均も同じ日に1,811円安、率にしてマイナス2.73%という大きな下落でした。

「また中東情勢か」「また関税か」と思った方も多いと思います。実際、その両方も理由の一部です。でも、この日の下落にはもうひとつ、あまり目立たない主役がいます。それが今日のタイトルにした「1週間で3倍」という数字です。

何が3倍になったのか

答えは、アメリカの中央銀行(FRB)が7月29日の会合で利上げをする「確率」です。

金融市場には、CME FedWatchという仕組みがあります。先物市場の価格から、次の会合でFRBがどう動くかの市場の見立てを、確率という形で数値化したものです。この確率が、7月15日時点では10.7%でした。10人に1人くらいしか利上げを予想していなかった、ということです。それが7月22日には34.7%まで跳ね上がりました。1週間で3倍以上です(出所: The Motley Fool、CME FedWatch)。

さらに別の調査では、9月の会合での利上げ確率は7月半ば時点ですでに73%まで上昇したとも報じられています(出所: TechTimes)。

これ、実はけっこう不思議な話です。というのも、2026年の前半は「今年は利下げが1〜2回あるだろう」というのが市場の基本シナリオでした。それが今、真逆の「利上げ」の話になっている。方向性がひっくり返りかけているわけです。

なぜこんなに急に変わったのか

犯人は、原油価格です。

中東情勢の緊迫化を受けて、原油の国際指標であるブレント原油は7月23日の清算値で1バレル100.69ドルまで上昇しました。前の日から7%の上昇です。原油が上がると、ガソリン代からプラスチック製品まで、いろんなものの値段に跳ね返ります。つまりインフレ圧力が強まる。

もともとアメリカのインフレは高止まりしていました。FRBが重視する物価指標(コアPCE)は、5月の時点ですでに前年比3.4%まで上がっていて、これは2023年10月以来の高さでした(出所: CNBC)。FRBの目標は2%ですから、かなり上振れている状態がすでにあったところに、原油高という新しい燃料が投下された格好です。

タイミングも意地悪です。7月29日にFOMC(米連邦公開市場委員会)が結果を出すのですが、その翌々日の7月30〜31日には6月分の物価統計(PCE)が発表されます。つまりFRBは、最新の確定的な物価データを見ないまま、7月の判断を下さなければいけません。この「見切り発車」感が、市場の疑心暗鬼に拍車をかけている面もありそうです。

ちなみに今のFRB議長は、5月に就任したばかりのウォーシュ氏です。7月の議会証言では「Fedの独立性は神聖不可侵」とはっきり述べています。トランプ政権は利下げを求めているとされますが、それよりインフレ抑制を優先する姿勢とみられています(出所: CNN、US News)。

7/24の急落、原因はひとつじゃない

ここで正直に書いておきたいのですが、7月24日の株安を「利上げ観測のせい」の一言で片づけるのは、少し乱暴です。実際にはこの日、3つの材料が重なっていました。(1)米国の新しい関税(Section301)が正式に発効したこと、(2)AI関連の巨大企業(Alphabet、Teslaなど)の決算を受けて、AIへの投資が本当に儲かるのかという疑念が再燃したこと、(3)原油高からの利上げ観測、の3つです(出所: Business Recorder)。

複数の報道が「利上げ観測」を明示的な下落要因として挙げているのは事実ですが、単一の犯人探しをするより、「悪材料が重なった日」だったと捉えるほうが正確だと思います。

投資家として何を見るか

金利が上がるというニュースは、一見すると「株には悪い話」で片づけられがちですが、実際には業種によって明暗がはっきり分かれます。

例えば三菱UFJフィナンシャル・グループは、2026年3月期(有報の期末株価ベース)で純利益が前期比プラス30.3%という過去最高益を記録しています(出所: EDINET、edinet-insight)。銀行は、預金と貸出の金利差(利ざや)で稼ぐビジネスなので、金利が上がる局面はむしろ追い風になりやすい業種です。一方で、将来の利益を今の価値に割り引いて株価がついているグロース株や、借入コストに敏感な不動産(REIT)は、金利上昇が逆風になりやすい構造があります。

私が来週見ているポイントは3つです。

  1. 7月29日のFOMC。据え置きだとしても、声明文や会見のトーンがタカ派寄りかハト派寄りか
  2. 7月30〜31日の6月PCE統計。FOMCのすぐ後というタイミングで、市場の解釈を左右しそうです
  3. 7月30〜31日の日銀会合。今のところ据え置き予想が大勢ですが、次の利上げ時期(10月か12月か)のシグナルに注目です

「原油高→インフレ→利上げ観測→金利上昇→株の割高感」という一本の糸が、ここ数日ではっきり見えてきました。来週はその糸がどちらに動くか、答え合わせの週になりそうです。

本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません。