マーケット深掘りノート

最高益なのに、検索広告は6.8%減? LINEヤフーで起きている「稼ぎ方の入れ替わり」

最高益なのに、検索広告は6.8%減? LINEヤフーで起きている「稼ぎ方の入れ替わり」の図解ポスター

LINEヤフーの決算を見て、少し変だと思う数字がありました。

2026年4〜6月期の売上収益は5,539億円、調整後EBITDAは1,548億円。どちらも第1四半期として過去最高です。ところが、検索広告の売上収益は前年同期比6.8%減、ディスプレイ広告も2.5%減でした。

「広告の会社が最高益なのに、広告は減っている」。このねじれをほどくと、LINEヤフーが何で稼ぐ会社に変わりつつあるのかが見えてきます。

最高益を作ったのは、広告の復活ではありません

8月3日に公表された2027年3月期第1四半期では、全社売上収益が前年同期比13.1%増、調整後EBITDAが23.1%増でした。営業利益も6.4%増えています。

ただし、内訳にはかなり温度差があります。

検索広告は430億円で6.8%減、ディスプレイ広告は587億円で2.5%減でした。一方、LINE公式アカウントなどのアカウント広告は383億円で13.3%増、LYPプレミアムなどのユーザー課金は420億円で12.5%増です。

さらに大きいのがPayPayです。決済・金融を含む戦略事業は、売上収益が1,302億円で34.9%増、調整後EBITDAが350億円で64.4%増でした。全社の調整後EBITDAは前年同期より290億円増えましたが、会社資料ではPayPay連結だけで140億円の増益寄与があったと示されています。

つまり今回の最高益は、検索広告が元気を取り戻した結果ではありません。検索結果やニュース画面に広告を出す従来型の収益が弱いなか、公式アカウント、会費、EC、決済、銀行が穴を埋め、さらに利益を押し上げた決算です。

なぜ検索広告だけ弱いのでしょうか

会社は検索広告の減収要因として、検索数の減少、広告需要の鈍化、広告の掲出調整を挙げています。前年同期の461億円から430億円へ31億円減り、パートナーサイト面が27億円の減収要因でした。LINEヤフー面でも11億円減りましたが、商品改善などで7億円を補っています。

ここで「生成AIで検索広告が終わる」と決めつけるのは早計です。Alphabetの2026年4〜6月期は、Google Search & otherが前年同期比17%増でした。市場も規模も違うため単純比較はできませんが、少なくとも検索広告が世界で一様に縮んでいるわけではありません。

LINEヤフー固有の検索利用、提携サイト、広告商品の設計、日本企業の広告需要を分けて考える必要があります。

PayPayが伸びるほど、見るべき数字も変わります

PayPay連結のGMVは5.5兆円で23.0%増でした。便利な決済手段として利用が広がっていることが分かります。

ただ、さらに速く伸びている数字があります。PayPay銀行の貸出金残高は1兆3,348億円で37.5%増です。

これは成長材料であると同時に、確認項目が増えたことを意味します。決済なら利用回数や取扱高が中心ですが、銀行では延滞率、貸倒費用、預貸利ざや、資本の厚みが重要です。決済アプリが総合金融サービスに近づくほど、LINEヤフーの利益は景気や信用コストの影響を受けやすくなります。

2026年3月期の有価証券報告書を見ると、LINEヤフーのROEは6.5%、のれんは2兆1,916.90億円でした(出所: EDINET〈edinet-insight〉)。買収や連結で売上を増やすだけでなく、大きなのれんを使ってどれだけ資本効率を高められるかも見逃せません。

投資家として次に何を見るか

まず、11月5日予定の第2四半期決算で検索広告の減少率が縮むかです。検索広告とディスプレイ広告の合計が下げ止まれば、PayPayの成長と広告の安定を両立できます。下げ止まらなければ、「金融の伸びで広告の弱さを隠している」という見方が強まります。

次に、PayPay銀行の貸出成長と信用費用をセットで見ます。貸出残高が増えても、延滞や貸倒費用が同じ速度で増えれば利益の質は下がります。

そして、通期予想です。会社は売上収益2兆2,400億円、調整後EBITDA5,850億円、調整後EPS30円を据え置きました。第1四半期の進捗率はそれぞれ24.7%、26.5%、32.3%です。EPSは好調に見えますが、1四半期だけで上方修正を決めつけず、税金や一時要因、連結効果を確認する必要があります。

まとめ

今回のLINEヤフー決算は、「最高益だから広告事業が強い」という単純な話ではありませんでした。

検索・ディスプレイ広告は減り、公式アカウント、課金、EC、PayPayが伸びています。LINEヤフーは広告プラットフォームから、企業の顧客管理と個人の買い物・決済・金融を束ねる会社へ変わりつつあります。

この変化が強みになるかは、PayPayの成長率だけでは決まりません。広告の下げ止まり、貸出の質、のれんを含む資本効率。この3つを同時に追うことで、最高益の「中身」が見えてきます。

本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません。