買う人は105万人増えたのに、購入額は減った? ZOZO決算の「変な数字」

買う人は増えているのに、1人が使う金額は減っている――。ZOZOが2026年7月31日に発表した2027年3月期第1四半期決算には、そんな一見ちぐはぐな数字が並びました。
過去1年間の購入者数は1,341万5,786人。前年同期から105万706人、率にして8.5%増えています。ところが、アクティブ会員1人あたりの年間購入額は4万900円で4.6%減、購入点数も10.5点で3.0%減りました。
「若い人の服離れ」や「消費の失速」と結びつけたくなる数字ですが、今回の決算はもう少し丁寧に読む必要があります。
商品取扱高のマイナスも、実はそのまま比較できません
第1四半期の総商品取扱高は1,567億5,000万円で、前年同期比1.6%減でした。しかし、これは2025年9月に計上を終了したYahoo!ショッピング内の契約ストア分など、「その他」が比較対象に入っているためです。
この「その他」を除くと、商品取扱高は1,566億9,400万円で5.1%増。売上高も561億3,200万円で3.9%増、営業利益は178億8,300万円で5.7%増でした。
つまり、見かけの総額は減っていますが、継続している事業に近い範囲では流通額が伸びています。「商品取扱高がマイナスだから、服が売れていない」と短絡するのは早そうです。
なぜ、購入者が増えたのに1人あたりは減るのでしょうか
会社の説明は、新規会員の構成比が上がったため、というものです。入会したばかりの人は、長く使っている会員より購入金額も点数も少ない傾向があります。新しい利用者が一気に増えれば、全体の平均は下がります。
実際、アクティブ会員は9.7%増の1,271万6,094人でした。一方、会員登録をしないゲスト購入者は10.0%減の69万9,692人です。単なる一見客より、会員として取り込む方向に数字は動いています。
ただし、これは会社説明に基づく事実であって、「心配はいらない」という意味ではありません。新規会員が半年、1年と使い続けても購入額が上がらなければ、別の見方が必要になります。値引きに反応する低単価の顧客が増えた、あるいは購買頻度そのものが落ちた可能性です。
今回、平均商品単価は3,682円で1.7%減りました。セール売上の比率と平均値引率が上がり、1万2,000円以上の購入で送料が無料になる販促の利用も増えています。1回の出荷に入る点数は2.31点と1.2%増えましたが、商品単価の低下を補いきれず、平均出荷単価は8,506円で0.4%減りました。
利益を支えたのは、服の値段ではなく物流でした
もう一つのねじれは利益です。「その他」を除く商品取扱高に対する粗利率は33.5%で、0.5ポイント下がりました。それでも営業利益率は11.4%で、0.1ポイント上がっています。
支えたのは物流です。配送会社との取引条件改善で荷造運賃の比率が0.6ポイント、倉庫作業の効率化で物流関連費の比率が0.3ポイント改善しました。値引きで粗利率が下がるなか、配送と倉庫の効率で利益を守った形です。
ここからは見立てです。この構図は短期的には強みですが、無限には続きません。物流費の改善余地が小さくなる前に、新しく入った会員の購入額が上向くかが重要です。値引きの悪化幅が物流改善幅を超えれば、売上が伸びても利益率は下がり得ます。
国内の服だけを見ていても足りません
事業別では、ZOZOTOWNの商品取扱高が3.6%増、中古のUSEDが10.0%増でした。海外ファッション検索のLYSTは33.3%増です。一方、ブランドの自社ECを支援するB2Bは27.1%減りました。
国内の新品ファッションに加えて、中古、海外、2026年4月に完全子会社化した香水サブスクのHigh Linkをどう育てるかも論点です。流通額が増えるだけでなく、買収に伴う費用を上回る利益を生むかを確認する必要があります。
投資家として次に何を見ればよいでしょうか
まずは8月3日です。7月31日の決算後、初めて東証で売買される日なので、寄り付きの反応と終値を分けて見ます。瞬間的な高値・安値と終値を混同しないことも大切です。
次は8月7日に公表予定の6月分と4〜6月期平均の家計調査です。「被服及び履物」とネットショッピング支出が、ZOZO固有の動きなのか家計全体の動きなのかを比べられます。
そして10月予定の第2四半期決算では、購入者数だけでなく、1人あたり年間購入額、購入点数、平均商品単価、値引率、出荷件数、物流費率をセットで確認します。年間購入額の減少幅が4.6%から縮まれば、新規会員が定着し始めた可能性があります。逆に低下が続けば、集客の量を収益の質に変えられていない恐れがあります。
まとめ
今回のZOZO決算は、「購入者が増えた」「商品取扱高が減った」「利益が増えた」のどれか一つだけでは実態をつかめません。
比較範囲をそろえると商品取扱高は5.1%増。購入者は8.5%増えましたが、1人あたり購入額は4.6%減りました。そして粗利率の低下を物流効率で吸収し、営業利益は5.7%増えました。
次の焦点は、新しく来た人が残り、買う金額を増やすかです。EC企業を見るときは会員数や流通総額だけでなく、顧客単価、値引き、配送費を一つのセットとして追うと、成長の「量」と「質」が見えやすくなります。
本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません。