純利益45%増なのに株価は下落? みずほ決算で見えた「金利上昇の次」

決算が良ければ、株価も素直に上がる。そう思いたくなりますが、今回は少し変です。
みずほフィナンシャルグループの2027年3月期第1四半期は、親会社株主純利益が4,229億円と前年同期比45.5%増えました。通期の純利益予想も1兆3,000億円から1兆4,000億円へ引き上げ、自己株取得枠も1,000億円追加しています。
発表翌日の7月31日、株価は前日終値7,818円から8,167円へ4.46%上昇しました。ところが週明け8月3日の前場は7,921円、前営業日比3.01%安です。好決算が消えたわけではありません。市場が早くも「次の問い」に移った、と考える方が自然です。
何がそんなに良かったのでしょうか
まず事実を確認します。7月30日に公表された決算短信では、経常収益が2兆5,208億円で前年同期比18.3%増、経常利益が5,990億円で62.5%増、親会社株主純利益が4,229億円で45.5%増でした。
会社の決算概要によると、連結業務純益は5,758億円で81.9%増です。国内法人を中心とする非金利ビジネス、国内外のセールス&トレーディング、円金利上昇などが寄与しました。
ここで大切なのは、「金利が上がったから全部もうかった」という単純な決算ではないことです。顧客部門の業務純益は3,358億円と前年同期から867億円増えました。一方、市場部門は1,997億円で1,262億円増えています。市場部門の増益だけで、連結業務純益全体の増加額の約49%を占めました。これは公表値からの計算です。
好決算なのに、なぜ売られたのでしょうか
8月3日前場の下落理由を一つに断定することはできません。同じ時点で三菱UFJフィナンシャル・グループは2.83%安、三井住友フィナンシャルグループは5.27%安で、銀行株全体に売りが出ていました。みずほ固有の決算評価だけでは説明できない動きです。
ただし、投資家が確認したい論点は見えてきます。
第一は、市場部門の利益がどこまで続くかです。金利、株式、クレジット市場の活況を捉えた収益は大きな強みですが、毎四半期同じペースで伸びるとは限りません。
第二は、利ざやの「量」ではなく「質」です。貸出金利が上がっても、預金金利や市場からの調達費用が同じように上がれば、恩恵は薄れます。預金を低コストで安定的に集められるかが重要です。
第三は、金利上昇の裏側です。みずほの外国債券の評価差額は6月末でマイナス3,870億円となり、3月末から322億円悪化しました。さらに、借り手の返済負担が増えれば、将来の与信費用にも影響します。第1四半期の与信関係費用は61億円で、通期想定1,100億円に対する進捗は5%にとどまっていますが、これは今後も低いと保証する数字ではありません。
銀行株を見る物差しが増えています
EDINETの有価証券報告書データでは、みずほの親会社株主純利益は2022年3月期の5,305億円から2026年3月期の1兆2,486億円へ約2.35倍になりました。2026年3月期のROEは11.47%です。利益水準と資本効率が改善してきた流れは、今回の四半期だけの話ではありません。
一方、銀行の増益は借り手にとって資金調達コスト上昇の裏返しでもあります。不動産や借入依存度の高い企業では、賃料や事業収益の伸びが金利負担を吸収できるかが焦点になります。地方銀行では、メガバンクほど市場・海外・投資銀行の収益源が多くないため、預金獲得競争と保有債券の評価がより大きな分岐点になり得ます。
投資家として次に何を見ればよいのでしょうか
まず8月3日の大引けで、前場の下落がどこまで残るかを確認します。前場値と終値は区別が必要です。同日予定される三菱UFJの第1四半期決算は、国内利ざや、手数料、市場収益の伸びがメガバンク全体に広がっているかを測る材料になります。
次は8月5日に公表予定の日銀6月会合の議事要旨、8月10日の7月会合「主な意見」です。追加利上げの条件が具体化すれば銀行の収益期待は高まりますが、同時に預金コスト、債券評価、借り手の信用リスクも動きます。
みずほ自身については、11月中旬予定の上期決算で、顧客部門と市場部門の利益、国内預貸金利差、与信費用、外国債券の評価差額、自己株取得の進捗を見ます。通期1兆4,000億円への上方修正は強い数字ですが、第1四半期の好調をそのまま4倍するのではなく、利益の中身を追う局面です。
好決算後の下落は、決算が悪いという合図とは限りません。「増えた利益のうち、何が繰り返せるのか」を市場が問い始めたサインとして読むと、銀行株の見え方が変わります。
本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません。