EPS43%増でも、米消費者の節約需要が強いとは限らない

Ollie’s Bargain Outletは、米国36州で日用品、食品、玩具、家庭用品などの余剰在庫や終売品を仕入れ、通常の小売価格より大幅に安く売るディスカウントチェーンです。2026年8月1日時点で686店を展開し、宝探しのような売り場と低価格を売りにしています。
9月2日に発表した2026年度第2四半期は、一見すると文句のない好決算でした。売上高は前年同期比9.1%増の7億4,130万ドル、希薄化後1株利益は43.4%増の1.42ドルです。株価も一時8.7%上がりました(Ollie’s、SEC、ChartExchange)。
ところが、同じ決算の中で既存店売上は1.8%減り、会社は通期売上高見通しを29.80億〜30.00億ドルから29.28億〜29.41億ドルへ下げました。既存店の減収要因は平均客単価です。
この決算は「米消費者がディスカウント店へ殺到している」証拠ではありません。売上増は新店、利益増は関税還付の寄与が大きく、既存店の需要はむしろ弱かったからです。
EPS43%増は、どこから来たのでしょうか
売上を「既存店の客数×客単価」と「新店」に分けると、構造が見えます。期末店舗数は前年の613店から686店へ11.9%増えました。全店売上は9.1%増えましたが、既存店は1.8%減です。つまり、既存店で一人ひとりが買う金額が減った分を、新しい店舗で埋めた形です。
利益側には、さらに大きな一時要因があります。米最高裁が2026年2月に一部のIEEPA関税を無効と判断し、米税関・国境警備局は4月に還付手続きを始めました。Ollie’sは第2四半期に2,940万ドルを受け取り、うち2,830万ドルを売上原価の減額として計上しています。
粗利率は39.9%から43.5%へ3.6ポイント改善しました。しかし会社が示した関税還付の寄与は3.8ポイントです。単純に差し引くと、還付前の粗利率は約39.7%で、前年をわずかに下回ります。
営業利益の増加額は3,150万ドルでした。売上原価に入った還付2,830万ドルだけで、その約90%に相当します。さらに、新店開業数が29店から15店へ減ったため、開業費も377万ドル減りました。希薄化後平均株式数も2.5%減り、純利益39.4%増よりEPS43.4%増の方が大きくなっています。増益額のほぼ全てを還付と開業費減で説明でき、1株利益には自社株買いも効いている以上、EPSの伸びをそのまま需要の強さへ置き換えることはできません。
では、全部が悪い決算なのでしょうか
そうとも限りません。会員数は12.7%増の1,810万人です。在庫は10.5%増えましたが、店舗数は11.9%増えたため、店舗当たり在庫は約1.2%減りました。新店へ商品を積み過ぎて在庫が膨らんだとは、現時点では言い切れません。
また、会社は還付の一部を値下げへ再投資する方針です。一時的に得た粗利を価格へ戻し、来店客と買上点数を増やせれば、還付益を将来の既存店売上へ変えることができます。
反対に、値下げしても客数・客単価が戻らなければ、次の四半期は還付が剥落する一方で販促費だけが残ります。既存店減収で固定費を吸収しにくくなり、すでに25.8%から26.6%へ悪化した販管費率がさらに上がる可能性があります。
日本のディスカウント株にはどうつながるでしょうか
比較しやすいのが、ドン・キホーテを展開するPPIH(7532)です。同社の国内ディスカウント事業は2026年6月期に既存店売上が5.0%増、客数が1.0%増でした。粗利率は27.8%と0.1ポイント低下しましたが、既存店の客数増が売上を作っています(PPIH)。
一方、PPIHの北米事業は既存店売上が0.6%減り、粗利率も37.0%へ0.3ポイント下がりました。会社は関税コストも要因に挙げています。米国事業でIEEPA関税の還付を受けられるか、金額はいくらかは未確認です。
EDINETの最新年次データは2025年6月期で、PPIHの売上高は2兆2,468億円、営業利益は1,623億円、営業キャッシュフローは1,320億円、棚卸資産は2,249億円でした。2026年6月期の有価証券報告書は9月25日提出予定です。
OLLI、PPIH、トライアルHD、しまむら、セリアを見るときは、全店売上やEPSではなく、既存店の客数・客単価、還付など一時要因を除く粗利率、店舗当たり在庫を同じ表に並べるのが実用的です。
次は9月16日と9月25日に何を見るか
この慎重な見方が外れる条件は明確です。Ollie’sの既存店売上がプラスへ戻り、客数と客単価がともに改善し、還付を除く粗利率が前年39.9%以上を保つことです。これがそろえば、値下げ再投資が実需へ変わったと判断しやすくなります。
まず9月16日8時30分(米東部時間)の米8月小売売上高で、総額だけでなく家具、建材、総合小売などOllie’sに近い系列を確認します。次に9月25日のPPIH有価証券報告書で、棚卸資産、営業キャッシュフロー、国内・北米のセグメント情報を見ます。Ollie’sの次回決算日は未公表ですが、第3四半期では既存店売上、客数・客単価、還付を除く粗利率の4点を先に確認します。
本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません。