原油91ドル、資源株だけ見ればいい?――答えは「数量と金利も見る」です

9月1日の東京市場では、少し変わったことが起きました。前引けの日経平均は0.39%安の66,050.33円でしたが、TOPIXは21.56ポイント高でした(Reuters・共同通信、9月1日)。原油高の恩恵を受ける銘柄がある一方、長期金利の上昇が値がさ株や高PER株の重荷になったためです。
個人投資家の疑問は、「Brent原油が91ドルを超えたなら、資源株を見ればよいのか」でしょう。結論から言えば、それだけでは足りません。今回変えるべきは、原油価格を単独で見る習慣です。資源会社の販売数量と、原油高が押し上げる長期金利をセットで見る必要があります。
原油と金利が同時に上がりました
9月1日0044 GMT、Brent原油先物は1バレル91.05ドルと前日比0.6%上昇し、WTIは86.59ドルと1.0%上昇しました(Reuters、9月1日)。米国とイランの戦闘再開で、湾岸のエネルギー設備やホルムズ海峡の輸送障害が再び意識されています。Reutersによると、戦争前に世界の石油供給のおよそ5分の1が通過した海峡で、週末に確認できた商品船は1日5隻まで減りました。
同じ時間帯に、米10年債利回りは4.78%、日本10年債利回りは2.97%へ上昇しました(Reuters、9月1日)。原油高が物価を押し上げると、市場は中央銀行が金利を高く保つ、あるいは利上げに動く可能性を織り込みます。資源会社には販売単価上昇の追い風でも、株式市場全体には割引率上昇の逆風になるわけです。
INPEXは原油高でも売上が減りました
INPEXは、豪州のイクシスLNGやアブダビの油田などで石油・天然ガスを開発・生産する日本最大級のエネルギー開発会社です。2025年の売上高は約2.01兆円、営業利益は約1.14兆円でした(EDINET〈edinet-insight〉)。原油価格とドル円の影響を強く受けますが、「原油高だけで業績が決まる会社」ではありません。
同社の2026年上期売上高は1兆4億円で、前年同期比4.6%減でした。原油・天然ガス売上の要因を分けると、単価上昇が492億円、円安が556億円の押し上げでした。一方、販売数量の減少は1,695億円の押し下げです。価格と為替の合計1,048億円を、数量減が647億円上回りました(INPEX 2026年上期決算)。
ここが今回の核心です。原油価格は「価格×数量×為替」の一つにすぎません。スポット価格が91ドルでも、その水準が何日続くか、実際の販売時にいくらで計上されるか、出荷量が戻るかで結果は変わります。資源株の業績を見るときは、原油チャートの横に販売数量を置くべきです。
なぜ資源株以外にも効くのでしょうか
今回の原油高は需要の急増より、ホルムズ海峡の物流制約による供給プレミアムの色が濃いものです。供給制約型の値上がりは、企業の売上を増やさずにコストを上げやすい特徴があります。
空運ではジェット燃料費、化学やタイヤではナフサなどの原材料費、電力・ガスでは燃料調達費が増えます。運賃や製品価格へ転嫁できるまでの時間差が、利益率を圧迫します。銀行は貸出利ざやの改善余地がある一方、保有債券の評価損や景気悪化による信用コストが増える可能性があります。
さらに、金利上昇は将来利益の現在価値を下げます。利益が遠い将来に偏る高PERの成長株ほど影響が大きく、足元のキャッシュフローが厚い資源・バリュー株は相対的に耐えやすくなります。これが、日経平均が下がってもTOPIXが上がるねじれを生む経路です。
強気と弱気の分かれ目
INPEXは2026年7〜9月のBrent平均を80ドル、10〜12月を70ドルと想定しています。91ドルが短いスパイクで終わらず、四半期平均が想定を上回り、販売数量も回復すれば、利益の上振れ余地が広がります。同社開示の損益感応度は原油1ドル当たり55億円、ドル円1円当たり30億円です(INPEX)。ただし、これは期初推計であり、数量や販売時期の影響を除けません。
逆に、停戦や通航正常化で供給プレミアムが剥がれ、Brentが75ドル未満へ戻れば、資源株の上振れ期待は縮みます。その場合、金利も低下すれば空運や成長株には緩和材料です。
判断の分かれ目は91ドルという一日値ではなく、四半期平均が80ドルを超えるか、販売数量が戻るか、米10年債が4.8%近辺に定着するかです。
次に何を、いつ見るか
まず9月2日10時30分(米東部時間)のEIA週間石油統計で、原油在庫だけでなく製品需要と留出油在庫を確認します。次に9月4日8時30分の米雇用統計です。雇用と賃金が強ければ、原油高と組み合わさって金利上昇を補強しやすくなります。
その後は9月15〜16日のFOMC(FRB公表日程)、17〜18日の日銀会合(日銀公表日程)です。ウォッチリストはINPEX(1605)だけでなく、日本航空(9201)・ANA HD(9202)、三菱UFJ FG(8306)・三井住友FG(8316)を同じ画面に置きます。資源、燃料コスト負担、金利敏感株の反応差を見れば、原油高が利益移転で済むのか、市場全体の逆風へ広がるのかを判断しやすくなります。
本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません。