泉州電業、粗利率は下がっても営業利益40.9%増。次に見るのは販管費です

泉州電業(9824)は、工場の機械や建物に使う電線・ケーブルを仕入れ、仕様提案や加工、配送まで担う技術商社です。メーカーと需要家をつなぎ、2025年10月期の連結売上高は1,355.91億円でした。事業紹介と前期決算を参照しました。
今回、私が引っかかったのは「営業利益が大きく増えたのに、粗利率は少し下がった」ことです。銅が高くなって電線の売上が膨らんだだけなのか、それとも稼ぐ力が変わったのか。次の決算では、売上の伸びに加えて、粗利の増加を販管費がどれだけ吸収するかを見る必要があります。
利益40.9%増を、どこまで需要回復と読めますか
9月4日公表の2026年10月期第3四半期累計、つまり前年11月から今年7月までの売上高は1,215.48億円で前年同期比19.9%増、営業利益は95億円で40.9%増でした。決算短信には、半導体製造装置・工作機械向け需要の回復と、建設・電販向けの工期遅延が並んで書かれています。需要は一様に強いわけではありません。
会社は通期営業利益予想も112億円から125.5億円へ引き上げました。理由として挙げたのは、機械向け需要の回復継続です。修正開示は経営側の強気の根拠になりますが、それだけで電線の販売量が売上と同率に増えたとは読めません。
粗利率が下がっても、利益が残る仕組み
損益計算書を一段下まで見ると、粗利額は154.22億円から183.36億円へ増えています。一方、営業や配送、管理などにかかる販管費は86.78億円から88.36億円へ増えただけでした。損益計算書の数字を差し引くと、次のようになります。
- 粗利の増加:29.14億円
- 販管費の増加:1.58億円
- 差し引きの営業増益:27.56億円
粗利率は売上総利益を売上高で割った値です。同じ資料から計算すると15.21%から15.09%へ小幅に低下し、販管費率は8.56%から7.27%へ下がっています。
営業利益率の改善を説明しているのは、全社の粗利率上昇よりも、売上に対する販管費負担の低下です。 費用を削ったというより、費用の増え方を上回って粗利額が増えた決算です。
既存の営業・物流網で粗利を増やせれば、その分は利益に残りやすくなります。ただし、物流改革や数量・商品構成の寄与額まで確定した分解ではありません。
銅高は、同じ速さでは売上に届きません
会社が短信に記載した期中平均の銅価格は、前年同期比44.7%上昇しています。これと売上19.9%増の差を取って「販売量は減った」と計算するのは不適切です。全ての商品が銅だけでできているわけではなく、売価を変える時期も違うからです。
6月5日の会社Q&Aでは、電材の販売は銅価格に連動する一方、大型工事では値決めから販売まで長い場合で18カ月かかると説明しています。機械向けには銅の比重が低い電線もあります。同じ銅相場でも、販売先と契約によって売上・粗利へ届く経路が変わります。
私が持続性を判断する分かれ目と考えるのは、銅相場の上昇が鈍った後にも、機械向けの取扱いと粗利額が伸びるかです。EDINET(edinet-insight)で確認した有価証券報告書には、産業機械向けFAケーブルの構成比を高めること、加工・物流機能を強化すること、銅価格に左右されにくい売上を確保する方針が書かれています。
これは、金属価格が押し上げる売上から、商品選定・加工・供給の機能で利益を得る事業へ重心を移そうとする方針だと読めます。ただし、足元の全社粗利率はまだ上昇していません。今回の増益だけで、その転換が完了したとは判断しません。
株主と取引先では、見る数字が違います
泉州電業の株主にとっては、既存の営業・物流体制で粗利を積み上げられることが利益の上振れ経路になります。反対に、銅価格の落ち着きで名目売上の伸びが鈍り、人件費や配送費の増加が続けば、今回とは逆に利益の伸びを抑えます。
電線メーカーの業績を考える場合は、商社の売上増をそのまま製造数量増へ置き換えられません。建設向けは工事の進行、機械向けは装置の生産・納入に左右されるためです。データセンターについても、会社はQ&Aで主に建設用の銅電線に関係すると説明しています。高速通信向け光製品と一括りにしない方が、需要の取り違えを防げます。
強気の読みが成り立つ条件は、機械向けの需要回復と費用抑制が続くことです。粗利額の増加を販管費の増加が上回るようなら、利益が残りやすいという前提を見直します。 銅価格が横ばいでも粗利額と営業利益が伸びるなら、事業面の改善をより強く評価できる材料になります。
9月7日、監視欄をこう書き換えます
9月7日は資料の再確認日とし、監視欄に「機械向け需要、粗利額、販管費率」を追加します。会社の発表予定日ではありません。
本決算では、通期から今回累計を引いた直近四半期の粗利・販管費も確認します。
次回発表の具体日は今回確認できていません。IRカレンダーで日付を確定し、発表後は決算短信の損益計算書と需要説明を開きます。確認するのは、銅の値上がりがなくても粗利を増やし、その増加を費用が食いつぶしていないかです。
本記事は情報提供目的であり、投資助言ではありません。